Diary?
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この間帰省した時にふと思った。 「そのへんに天然記念物がうじゃうじゃいるぞ。」 比喩ではなくて、ほんものの天然記念物が。
私は田舎育ちのくせにカエルが触れない。見るのは大丈夫で特に怖いということもないのだが、触るのだけはダメだ。両生類はどうも、皮膚が苦手。表面なのに内臓っぽい感じがして。
しかしまわりは田んぼだらけ、家の庭には池もある。カエルが増えないはずがない。かくして、春から夏にかけては、洗濯物を干そうと思ったら物干竿にアマガエル。夜中に板の間をぺたしぺたしとジャンプする音がする。道路には平面ガエル。などという状況が日常化する。その度に父を呼びつけては取ってもらうのであった。
ある日台所で洗い物をしようとしたら、シンクの隅にアマガエルのちょっと大きいヤツがいた。例によって父を呼ぶ。父はそのカエルを手のひらに載せて「これはモリアオやなあ。池に放してやろう」と言う。庭の池には水面すれすれに松の枝が伸びていて、毎年その枝にモリアオガエルが泡状の卵を産みつける。そのメレンゲのような卵は見たことがあったし、孵化したオタマジャクシが枝からボタボタと池に落ち、落ちた端から鯉に食われたりしていると聞いたこともある。しかし成長した姿を間近で見るのは初めてだった。絵に描いたような、デフォルメしたキャラクターみたいな、カエルらしいカエルだった。そしてお皿を洗いながら、「台所に天然記念物がいるのかぁ…なんだかなあ。」と呟いていると、父の口からはもっと「なんだかなあ」な話が語られる。
あのあたりにはオオサンショウウオもいるのである。いるのだけれど、モリアオガエルとは違ってさすがに人前に姿を現すわけではないので、私は見たことがない。家の裏を流れている川は鮎釣りのスポットなのだが、村のおっちゃん達は皆で船を出して網をかけ、文字通り一網打尽に穫ってきて焼き鮎で酒盛りを開くということをしているらしい。それは釣りじゃなくて漁だと思うよ。で、ある年、その網にオオサンショウウオがかかったのだそうだ。「吸い物にすると旨いと聞いたことがあるぞ」などと言い出す人がいて、食ってみるかという物騒な話にもなったらしい。しかし何せ特別天然記念物である。捕獲そのものが法律で禁じられている。しかたがないので未練たらたらで川に放したということだ。
天然記念物が台所にいるのもなんだが、食ってみようとするのもすげえなと思う。でもほんとにお吸い物にしたら美味しいのかな。ちょっと気になる。いやいや、やりませんけどね。
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