NY州在住 <旧『東京在住』・旧旧『NY在住』>
kiyo



 風邪と不確実性のブラックスワン

 さて、季節もかわりはじめているイサカです。去年もそうだったように記憶していますが、春をスキップしているようです。いきなり暖かくなり、私も半袖で学校にキャンパスまで行くことが多くなりました。冬でも夏でも、太陽光がきらいな私はサングラスをしていますが、そのほか、すぐに帰ってくる予定の場合には(夜に帰宅が及ばない場合には)短パンでだってキャンパスに行きます。

 ところが、実はここ四日間風邪をひいて寝込んでおります。変だなと思ったのは金曜日の夕方(実は先週の木曜日・金曜日はまれに見る激務だった)すこし喉の痛みを感じたんですよ。そのときは危ないという認識はなかったのですが土曜日にはすでに寝込んでおりました。


 原因ははっきりしていてイレギュラーな予定が入ったんですよ。あーそこで無理をしたのか、と。無理が利かない体になったあたりを加齢のせいにしていいのでしょうか?それとも、季節の変化により体に感じないくらい徐々にストレスがかかっていたんでしょうか?

 何はともあれ、月曜日の朝一で病院にいって薬を処方してもらってそのまま部屋の中で倒れております。心配した中華ルームメイトは、右往左往してくれていますが、本当に気にしないでほしい、と思う。香港産の薬を持ち出されたときは命の危険を感じたので丁重にお断りしておきました。


 こういう生活(大学の中で本を読んだり考えたり書いたり、偶に人と議論をする)は一般的な商売に比べて別に楽じゃないと思うのですが、やっぱり「不確実性」を相手にすることはないですよね。ほとんど予想の範囲内。今日の話はそんな話。

 どうやら、大混乱祭り中のアメリカの金融業界ではヘッジ可能(予測可能)な「リスク」と予測不可能な「不確実性(uncertainty)」とをどう折り合いをつけるのか、というのが最もホットな話題らしく、『Black Swan』(Nassim Nicholas Taleb 2007)(参照:http://en.wikipedia.org/wiki/Black_swan_theory)がめちゃくちゃなベストセラーらしいです。講義でも何度とりあげられたことか。

 つまるところ、日本のレストランで、店員がミスって客の頭にコーヒーをぶちまけても、せいぜい訴えられる、胸ぐら捕まれる、一週間程度のけがだろう、じゃ、その確率とコストを計算して、保険などでヘッジしよう、という話がリスクヘッジで、そのコーヒーかけられた客が店に自爆テロまで起こす、という突拍子もないことが不確実性ということですよね。そんな突拍子もないことがおきたときに我々の対処はどうあるべきか?ということらしいです。(例は私が作りましたので本当に適切かどうか分かりません。いま金融業界でおきているのはまさにその突拍子もないことなんだとか。)

 それはそうと、日々触れあう人が多くなればなるほど不確実性がおおくなるわけで中々ヘッジ出来なくなる。他方で、私の生活は、本や論文との対話が70%で、あとは少しの講義と、先生やグループとのミーティングです。だから、本の中の著者は私にウィルスを持ち込むことはないので、他人からうつる風邪なんて限りなく不確実性に近い、そういうことを前提として予定を組んでいるわけですね。(実働時間としては一般に働いている方と同じか、それより少し多いことかと思われます)

 そこにイレギュラーなお客様がいらっしゃると、途端に私の生活リズムが狂い色々不確実なものと向き合わなければいけないというわけです。するとこの論文提出を目前に控えたこの時期に風邪を引いたりするわけです。何も読めないくせに、頭は多少なりとも働き、なりやまない咳のせいで眠れないものでこんなことばかり考えていました。

 それでも、予定は動き続ける。スケジュールを一杯一杯に組み、余裕のないことをしていると、不確実性による混乱のダメージは乗数的にでかくなる典型を身をもって体験しております。ま、ありえないことを不確実性と定義しているのだから、そのための余裕などそもそもナンセンスなんですが、少し代替可能な予定を組んでおくべきだったと後悔しております。例えば、ゴルフのスケジュールを週三回入れておいて、万が一と言うときはそれを全て勉強に充てることが可能だとか。おお、まさに流動性の確保ということじゃないか!  

 というわけで、学期末ということもあり絶対に休むことが出来ない状況が続いておりますので私はマスクをして這ってでも予定をこなしているわけです。後悔先に立たず。


 今日は本当にマニアックな話になりましたね。今日はコメントもメールもないだろうな・・・。きっと最近拙宅にいらしたNさんあたりしかほくそ笑んでもらえないかもしれないネタでした。


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2008年04月23日(水)
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