おさむ日記/炭焼き生活日記 〈竹炭・竹酢液の無限窯〉
旧暦十二月十三日
その「御火鑚具(みひきりぐ)」なる火起こし器を地元の木工職人さんに作ってもらい、試しにやってみると、これが火がつかないんです。 それというのも、直接教えてくれる人はなく、形やサイズも伊勢神宮のHPの画像で目見当で決めて、やり方も火起こしのHPを探して参考にしただけだったのです。 舞きり式という火起こし器なのですが、二本の棒を十字に通して、横の棒を上下に振ると縦の棒が回転して、その縦棒の先端にV字の切り込みを入れた板に当てて擦り合わせて、その摩擦で火を起こすというものなのですが、きっとこの説明では分かりづらいですね。
 無限窯の御火鑚具
参考に http://www7.ocn.ne.jp/~hiokosi/hiokosihouhou.htm
そうこうしているうちに、火入れ前日の夜中。 いろいろと改良を重ねてようやく進展が・・。 心棒と板が擦れて炭に近い黒い粉が出てきて、そこに微かな明かりが見えてきました。 それを粉が飛ばないほどの息を吹きかけると、少しずつ大きくなり、やっと種火(炭火)ができました。 そしてまず、種火を消さないように杉の粉(知人からもらった杉のお香)を足して種火を大きくして、さらに麻の繊維を加えれば発火が! と思ったのですが、これがなかなか炎が出てこないのです。 杉のお香もあって、仮眠小屋は煙だらけ。 咳き込み、涙と鼻水をぼろぼろ流しながら、さらに吹きつづけ、しかし麻の繊維は赤くなるだけで発火せず・・。 それを10分ほど繰り返しているうちに、ようやく他の素材を使おうという考えに気づいて、杉の皮を細くして加えました。 そうすると煙の中から、ほぁっと眩しいほどの炎がでて、用意しておいたロウソクを掲げて移し、ようやく火が灯りました。 人里離れた山小屋で一人、小川のせせらぎしか聞こえない静かな夜の中、何ともいえない驚きがありました。 まるで小さな火の神さまが歌舞伎役者のように「テケテンテン!」とお出でになったような。 なんて火は尊いのだろう、と思いました。 補足すると、この火だけでなく、そもそも火とはすべて尊いものだったんだ、と。
この初めて灯った火を朝までロウソクで灯しつづけて、初窯の火入れに使わせていただきました。 ですので、私にとって今までの炭焼きとはまったく意識の違う炭焼きになりました。
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