太陽がぽかぽかと出ているきもちがいいおひるすぎ。 ああ、キモチガイイなぁ。 よーし、今日は!
なにをしよう!!
ふとんのなかで目が覚めて、すこやかな気分。
いい気分で窓を空けた。
それがはじまりだった。
風がそよそよとはいってきて、あたしのほっぺたを通りすぎていった。 あたたかくってフトンの中で「はぁ」ってした。
気付いたら涙がだらだらと流れていた。
『伊豆の匂いだ』
生まれ育ってもいない、故郷でもない、ここで何年も過ごしてきたわけじゃない、
だからこそ、今じぶんが「ここ」にいると胸に染み入った この場所の匂い。
ああ、4年前ここにきたあのころ、 不安と無色な未来をかかえて 毎日とにかく必死で生きていたあのころ。
はじめて死んでしまいそうなほど愛した人と あまりにもはかなかったお互いの弱さをだきしめあいながら 感じたあの時の風とおんなじ、あの匂い、伊豆の風。
あのときから、あたしは何か変わっただろうか。 うん、確実に変わっている。
人は、時間と共に変わる。
あたしは、今あのときよりも生きているだろうか。
そして今この風をとおりすぎながら 過去をフラッシュバックしたあたしを またいつか 感じる時はくるのだろうか。
また、こんなふうに風を感じながら・・・。
そのときの未来のあたしは どんな匂いで、またこの土地で吹く風を受けとめるのだろう。
あの匂い。 ほのかで。 はかなくて。 伊豆の匂い。 あたしのにおい。 あたしだったにおい。
過去と、今、このときの、この場所でいきる匂い。
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