恋のさじかげん
れのん



 電話

出ないつもりだった。
ビデオを見ていたし、両親も一緒だったし。
だけど、着信音が彼であることを知らせているのを耳にしたら、
昼間、あたしが悩んでいたことも、思い切ろうとしたことも、、、全部、
どうでも良くなってしまっていた。
というか、電話を取ることが当たり前の選択で、
それ以外の行動なんて無いぐらいの自然さだった。
「年始、どうしてる?」
いきなりの言葉。「メリークリスマス」ではなく、「年始の予定伺い」。
「年始は、、、特に予定はないよ。(クリスマスだって空けていたのに)」
声には、不満がいっぱいたまっていたと思う。
それを出さないように、声が聞けたうれしさを隠すように、言葉を綴った。
「どっか、行こうか。久々だし。」
その言葉が、あたしを救ったのか、単にその場だけの幸せになったのか、
ともかく、あたしの頭をもたげていた暗雲は晴れたと言うこと。。。
一緒に出かけられる。一日だけでも、独占できる。
そういう思いよりも、とっさによぎった感情は、
「忘れられていなかった」という安堵感だった。
愛されている実感がない時、自分に自信がないとき、
人は誰かにその存在を忘れずに認めていて欲しいと思うのだろう。
ほんの一瞬思いだしてもらえるだけでも、幸せだって思えるぐらいに。。。。
おわらせなきゃいけない。おしまいの音は、もう、聞こえているはずなのに。。。

2000年12月26日(火)
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