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[2005年11月21日(月)] 天井裏より愛を込めて 第六話


 俺、国寺 真。浮遊霊やってます。

 世界は、局地的に驚きで満ちています。









天井裏より愛を込めて
 第六話「『ガラス玉』に映った月」









「巫女?」

「はいですの。あ、これ名刺ですの」

 そういって手渡されたのは、『三笠神社 新米巫女 三笠 清凪(みかさ きよなぎ)』と書かれた紙切れ。いや、名刺か。

 突っ込み待ちなのだろうか? 常識で考えるのならそうなのだろうだろうが、むしろ突っ込んだら負けか? 負けなのか?

 しかしなんだ、この、キラキラした瞳でこっちを見つめている少女は? まるで「すばらしい出来栄えでしょっ?」と声が聞こえてきそうな笑顔は。なんとなく、初めて仕事で名刺を使ったときのことを思い出して涙がこぼれた。

 っていうか、

「俺幽霊だからもらってもしょうがないし」

 現にさっき掴もうとした俺の手は空を切った。

「残念ですの。ようやくもらってくれる人が見つかったと思ったのに」

 幽霊相手に名刺なんて不必要だとお兄さん思います。

「それよりも幽霊でいらっしゃいますの?」

「巫女なのに気づいてなかったんかい」

「私(わたくし)、幽霊の方に会うのははじめてなもので」

 それでいいのか、日本の巫女産業。

「あの、お名前は?」

「国寺 真。出来立てほやほや、ってほどでもないが、新米幽霊だ」

「まぁ、私と同じですわね」

 確かに新米だと名刺には書いてあった気がする。

「国寺さん。成仏なさいませんか?」

 唐突に巫女さんはすっごい笑顔でそんなことを言った。今までも笑顔だったのだが、濃度が違う。笑顔濃度。

 今までの笑顔はぽややん級だったのだが、今の笑顔はずごごごご級だ。亜熱帯気候がツンドラ気候になった、といい直したほうがいいか? 常夏の砂浜がキラウエア火山の火口?

 よくわからない? 安心しろ。俺にもよくわかってない。

 唯一つわかっていること。このままここにいたらやばい。それだけは本能が教えてくれた。

「じ、じゃあ、俺はこの辺で」

 そそくさとその場を去ろうとする俺。しかし、そうは問屋が卸してくれないらしい。

「ふふふ。どこに行かれますの?」

 がっちりと首根っこを掴まれる。むしろ鷲掴みです。

「いや、ちょっと所用を思い出しまして」

「私を置いてですの? 酷い方ですわ」

 振り向くな、振り向くんじゃない。終わる。振り向いたから何かが終わる。そしてはじまる?

「帰る! 僕、おうち帰るのっ!!」

「駄々をこねても駄目ですの。成仏なさいまし」

「いーやーだー!!」



 俺の悲鳴は、誰にも聞き届けられることなく、夜の街中に響き渡った。

 あ、今日ってば満月なんだっけ……。

 って現実逃避してる場合じゃねぇつ!?

「うふふ。痛いのは最初だけですの」

「いーやーっ! おーかーさーれーるー!!」









次回予告

「ということで、国寺さんは成仏されてしまったので、次回からは私、三笠 清凪が活躍する除霊活劇『成仏されちゃいますの?』がはじまりますの」

「くぉらっ! 勝手に殺すんじゃねぇっ!!」

「真さんはもう死んでますの」

「揚げ足取んなよ。つーかなんだよ、除霊活劇って?」

「現れる怨霊悪霊魑魅魍魎を千切っては投げ千切っては投げ、ですの」

「いや、意味わかんねぇし」



天井裏より愛を込めて
 第七話「晴れ、ところにより死神娘」



「ネタ切れですの?」

「それは言っちゃめーなのよ」





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