Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2018年05月19日(土) |
# 1132 『Mark Turner / Lathe of Heaven』 |
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稲岡 邦弥さんが写真3件を追加しました。
ふるさと未来研究会 第107回月例会 藤沢輝忠長老の案内でECMファンの松本オーナーが経営するBAR meijiuに立ち寄る。
飯田橋の駅から徒歩数分。小さなビルの路面店。開店8年になるという。ラルフ・タウナーとジョン・アバークロンビーのギター・デュエット『サーガッソー・シー』がかかっていた。
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進行していたのか、ECMカタログ新版、いつ出せるのか、ECMカタログ新版、
わんこそば状態でティムバーン、アーロンパークス、マークターナー、ジャレットノーエンドを250字即答する、
Jazz Tokyo の過去ログもいつ失われるものか、ウェブ時代のはかなさよ、
検索しづらいので置く、
# 1132 『Mark Turner / Lathe of Heaven』 text by Masanori Tada
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マーク・ターナー、13年振りのリーダー作。アヴィシャイ・コーエンとの2管カルテット、ECMから
13年前というと『Dharma Days』 (Warner Bros., 2001)、当時、初来日したマーク・ターナーに“タイガーウッズ出現”を見て(ロヴァの耳8参照)「音が録れていない。まったくターナーの凄味が伝わってこない。音楽のたどれる設計図レベルすら、ぼやけてしか聴こえない。問題視している。」と記していた。この時ジャズ・リスナーに転身したわたしにとって、その後指摘できるターナーのベスト・プレイは、カート・ローゼンウィンクル・グループの『ヴィレッジ・ヴァンガード・ライヴ』と、フェレンク・ネメスの『ナイト・ソングス』、エンリコ・ラヴァの『ニューヨーク・デイズ』だ。
さて、この初秋最大の本盤。やはりアイヒャーはわかっていた。ターナーの武器と特質を。ラヴァ盤でECMオールスター共演及び法王モチアンとの録音というジャズ史への配置、フライ・トリオの水準を数段上げつつ ブラッド・メルドーへの創造する批評行為もしくは目くばせにする録音、と、今になってみると明確に言える足どり。このECM初リーダー作は、満を持して、それはドラマー、マーカス・ギルモアの登用によって、より高水準な到達を果たしている。適切な喩えではないかもしれないが、集中した意識に舞う弦楽四重奏のようでもあり、獰猛なジャズメンシップをクール・ジャズの冷徹で料理した見事さとでも言おうか。
アヴィシャイ・コーエンのトランペットは抑制された指揮棒に従うようである。それが、ターナーの重力を外されるような旋律の身動きを活かす。ジョー・マーティンの控え目ながら的確な演奏も必要十分だ。ターナーの狂気は、コードやハーモニーの予測から自由になって、そこまで辿るのか!と聴く者の耳の重心を動かしてしまうところにある。コルトレーン以降とか、ジョー・ロヴァーノの革新を受けて、という記述も間違いではないけれど、重力の操作という点、そこは史的変節点だと思う。
ECMは、老兵ビリー・ハートを見事に、ターナーやアイヴァーソンを配して、そのドラマーとしての特質を結晶化させていたが。今回ECMに初登場させたマーカス・ギルモアもまた、ヴィジェイ・アイヤーやスティーヴ・コールマンとの演奏で見せる強烈でリズミックな叩きを、サジェスチョンを受けて別のラインに乗って叩いているようなところがあり、それは新鮮で調和的なもの、耳を渇望させる歓びに至っている。この叩きは、大きな再生装置で体感してみたい。
現代ジャズシーンに勃興する才能を、共演来歴や系統や文脈やレーベルを一旦外してセッションさせて新しい作品を作る。ECMはここでも、そのコンテンポラリーな成果を見せつけている。
CDタイトルは、SF好きのターナーらしく、ル・グィンのSF小説『天のろくろ』からとのこと。
ジャズを演奏する世界中のサックス奏者が参照点とするマーク・ターナー。若い頃はブレッカーにそっくりだったという証言もきいたけれど、コニッツの曲はすべて暗譜しているクール・ジャズ修行を経て、この唯一無二の声と語りを獲得している。脱線するようだが、同窓同年代の橋爪亮督が平井庸一クールジャズ・セプテットから開花していることと重なって見える。ターナーの狂気の発現はここでのアヴィシャイやローゼンウィンクルのような強烈な共演者が要るのに対して、橋爪は声と語りと世界観(ニアリーイコール、コンポジション)で唯一無二を聴かせる。ECMは橋爪亮督グループを録るべきである。
13年前に「問題視している」ことを共有していたアイヒャーに耳の友情を、13年前にターナーを呼んでくれたオフィス・ズーさんに大きな感謝を。わたしはどちらとも面識はないが、心の友である、ジャイアンか!(多田雅範)
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