Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2012年01月30日(月) |
タダマス4御礼(2) |
シーンが雑多であることを確認したつもりではないのだけど。どのように年間ベストが刈り出されて配置されたのがの理路はある。
それとは別に。あの2枚を外した理由はこんなかんじかなあ。
現代ジャズ2012
(1)
ポール・モチアン(25 Mar 1931 – 22 Nov 2011)が老舗ヴィレッジ・ヴァンガードで若き覇者エリック・ハーランドと週替りで叩き合っていたのを胸がすく思いで見ていたものだが、それは2011年年頭の現代ジャズのメインストリームの屋台骨、その象徴であったし、最期の光芒でもあったとは。サックス陣はマーク・ターナー、クリス・ポッター、ビル・マケンリー、ダヴィッド・サンチェスらが並んでいた。引き続きモチアンは3週にわたって(自己のグループを1・3週に率いての)ドラマーを勤めた(!)。この3週目には菊地雅章もいた。80歳の誕生日を迎えると、モチアンはクレイグ・テイボーンを擁したカルテットを打ち出し、またマーク・ターナーのカルテットでも叩いた。誰もが、この法王モチアンの君臨におののいた。
法王である由来?ロヴァーノ=フリゼール=モチアン・トリオ(1983〜)が放ったじわじわと感染するような静かな革命の浸透によってである。
サックス奏者ジョー・ロヴァーノのガチガチにブロウ決めまくる系譜ではない(!)奏法の革新は、端的に言って皇帝マーク・ターナーが登場する環境を用意(培養液だ)した。
ギター奏者ビル・フリゼールもノンサッチ・レーベル等で開花し、ジャズ〜汎アメリカ音楽を描いた。
さらに、プー(菊地雅章)=ピーコック=モチアン・トリオ「テザート・ムーン」、複数のサックス、ギターで構成するポール・モチアン・エレクトリック・ビバップ・バンド(EBBB)、この2つは91・2年に具現化され、一気にヴァージョンアップの様相。前者は、モチアンが手放さなかったピアニストの重要性を想像する必要があるし、後者は才能たちが輩出する母体となった。
モチアンEBBBで、クリス・ポッター、トニー・マラビー、ジョシュア・レッドマン、クリス・チーク、ビル・マケンリーといったサックス奏者、カート・ローゼンウィンケル、ブラッド・シェッピック、ウォルフガング・ムートシュピール、ベン・モンダー、ヤコブ・ブロといったギター奏者がその才能を飛躍させた。
晩年のマイケル・ブレッカーがマーク・ターナーとクリス・ポッターに注目していると発言したのは、さすがだ。
ここで挙げられた演奏家は、それぞれがリーダー格となりトップ・ランナーとしてシーンを文字通り形成している。この見立て自体がリスナーの間で共有できているとは言えない。このメインストリームもゆうに10年を越えている。新しい才能は出てくる。メインストリームを破る様相で。
モチアン逝去を受けて、そういえば今年、ECMとWinter & Winterという最上級のレーベルから届けられた2枚『ライブ・アット・バードランド』『ウインドミルズ・オブ・ユア・マインド』、80歳にして最高水準のジャズ盤を、しかも国内盤になるという高いハードル越え(それはカンケーないか)、リリースされ即古典になるような内容、全員出来がよすぎる・・・、これはセレモニーの翳りを帯びてひときわ輝いている音楽だったことに、納得するしかないような気分だった。まあ、歴史の見立てなんてだいたい後付けの編み上げだから仕方ない自分だ。
次の世代、なのだ、現代ジャズの今日の発火点は。
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