Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2009年07月23日(木) |
ゲキチはジャレットか! |
ケマル・ゲキチというピアニストに一瞬にして魅入ってしまった。■
指が、ジャレットみたいに強靭で、鍵盤に張り付いて離れないような、毒グモとマムシとタコが合体したような、どんなんだそれ、強い精神力に封印されたパッションの振動を聴くかのようなピアニズム。 鍛え抜かれた鋼のような筋肉でできたスマートな身体、全身バネのような歩きかた、髪をうしろに束ねて、まっすぐと見据えた目線、こ、この目は、ミルコ・クロコップであり、キース・ジャレットではないか。
経歴を読みたまえ。85年のショパン国際コンクールで審査員の評価が分かれ本選出場を逃す。CDがドイツで6万枚日本で8万枚売れる。90年代に入って集中練習のため一時的に演奏活動をやめる。そんで、
「1999年ゲキチはマイアミ国際ピアノフェスティヴァルに招かれ、まさにステージに歩き出ようとしたその瞬間、彼は故郷のノヴィサドの町が戦火に包まれていることを知る。3月24日のその日、NATOのユーゴスラヴィアへの攻撃が始まったのだ。ゲキチはそのままステージへ上がり演奏をするが、この時の演奏はこれまでの最高のリサイタルであったと言われており、今世紀最高のピアニストの一人としてのゲキチの活躍の始まりであった。」
ただのピアノ演奏なのにどうしてゲキチもジャレットも“生と死”なんて形容が付いてしまうんだ。ちっ、ちっ、ひとさし指左右、わかってないねえ、音楽は精神なのだよ。でも、ジャレットじゃハナシにならない水準だろ、ゲキチの音楽は。
今日は、武蔵野音楽大学の「世界の名教授たちによるスペシャルコンサート」@練馬文化センター。フロリダ国際大学で教鞭をとる二人、ヴァイオリンのロバート・ダヴィドヴィッチ、ピアノのケマル・ゲキチが共演した。ルーマニアの老いたシロクマ、と、クロアチアの黒ヒョウ。明らかに格上のゲキチに支えられるように、ダヴィドヴィッチは老教師らしい誠実な熱演でコンサートを完走した。 ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ 第7番 ハ短調 Op.30-2 イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調「バラード」Op.27 エネスコ: ヴァイオリン・ソナタ 第3番 イ短調「ルーマニア民俗風で」Op.25 ★名演!名曲!インプロヴァイズドECM! ショパン: バラード 第4番 ヘ短調Op.52 ★ゲキチの魂のピアノ独奏 フランク: ヴァイオリン・ソナタ イ長調
2ヶ月ぶりにエクスワイフに会いにゆくと盲目の天才ピアニスト辻井伸行信行の映像を見せてくれた。上手いっすね。なにもない純粋な上手さっすね。だいたいおまえさー、目を閉じて聴いてみろよー!と言いたくなったが、あまりにもやばい発言なのでぐっとこらえた。本人がこれから表現の深みを身につけたいって言ってんだからいいだろ。ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール■に出たいというのがおいらにはわからんよ。
ゲキチのコンサートをこそ聴かれるべきだ。10月に札幌コンサートホールKitaraで辻井とゲキチがそれぞれ公演するが、辻井は4000円で「大ホール」で「即日完売」。ゲキチは5500円で「小ホール」で「まだ売ってます」。辛うじてチケット代の高さでゲキチの名誉は保たれているか。札幌市民よ、ゲキチを聴け。
わお!げ、ゲキチの活動を調べてみると、お、おれが昨年激賞した関野直樹■とデュオ・コンサートを日本で何度かしていたりする。リストの2台ピアノのための作品などを。
トラだ!トラだ!おまえはトラになるのだ、タァーッ!白い、マットの、ジャングルにー。
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