Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
DiaryINDEX|past|will
2007年09月27日(木) |
土星の環 W・G・ゼーバルト |
ロウストフトの南を三、四マイルにわたって、海岸線は長くゆるやかな弧を描く。草の生えた砂丘や低い崖の上方を通っている歩行者用の小径からは細(さざ)れ石の平浜が見下ろせるが、その浜に沿って、夜となく昼となく、一年中いつなんどきでも、棒と縄と帆布と防水布で思い思いに拵(こしら)えたテントのようなものがずらりと並んでいるのを、おりふし眼にすることがあった。それらは長い列を作って、ほぼ等間隔で海端に続いていた。あたかもどこかの流浪の民の最後の生き残りがここに、この地の果てにたどり着いて、これまでの窮乏も流浪もそのためにあったと思わせてくれるような、はるかな過去からの悲願であった奇蹟のおこるのを待ちわびているがごとき光景だった。・・・
|