Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2004年06月16日(水) |
TeoMacero『black knight』『whispering gods』・半年ぶりにまこと師匠と |
ふむ。テオ・マセロの『black knight』と『whispering gods』が届いた。サイトは→■ 『black knight』は、マセロがNYで遭遇したピアニスト(一体誰なんだ?)に電流が走って「即興を弾いてみてくんない?」と頼んでスタジオにぶちこんで録って、その録音にかぶせてジョー・マネリ、DJロジック、ヴァーノン・リード、デイブ・リーブマンらを演奏させた、という代物。たしかにこのピアニスト、すごいタッチをしている。クラシカルな熟練をベースに、技巧的ではないが、なにげに深い表現の彫塑を露わにしている。無視できない重さ。共演させた4人(マネリ、ロジック、リード、リーブマン)の人選もそれに相応しいものになっている、と、マセロの確信を想像する。あまりジャズファンにはおすすめできない音楽かもしれない。分析的に聴くとき、審美のモデルに尺度が合わせられなくて、下手だのニセモノだの言いそうになるかたちをしている。 『whispering gods』は、イージーリスニングmeetsアルヴォ・ペルトandマイルス・デイヴィスというコンセプトである、と、本人が述べているような、これまた奇怪な作品。トランペットはルー・ソロフが演奏している。なにげにわきのアマいユルい作品ではある。しかし、マセロの欲望といったものがこの音楽の背後から妖気のように漂ってくるあたりに、彼が夢見た密やかな“音楽の交歓”、それはまさに音楽が主語であるという点で標題「神々のささやき」をあらわしている、とも、言えよう。 ・・・ま、売れないだろう。売っても仕方ない音楽とも言える。求めるひとに気付かれて伝わればいいとマセロもそう思っているだろう。
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半年ぶりにまこと師匠と情報交換をする。10年前はわしが師匠だったのだが、この2年でまったく形勢が逆転してしもうた。
「ジム・オルークが加わったソニック・ユースは格別にいいですよ。クリスチャン・マークレイとルイ・スクラヴィスのデュオ、デヴィッド・トゥープのコンピ、ジョン・ゾーン企画のミシャ・メンゲルベルグ・トリビュート、ノエル・アクショテ、ブルー・シリーズのスプリング・ヒール・ジャックはどうでした?聴きました?たださんの最近のおすすめはなんですか?まだ坂本真綾を聴いているんですかー?」と、ほぼ概略。
「アジカンと堂本がいいねー。」 「いちおうチェックしてますけどね、・・・いまさら、あんなサウンドは・・・一言でいえば終わっていますよ。」 「ほええ?・・・んじゃあ、ううあの『SUN』、は?」 「あんなのビョーク・メソッドをUAに適用しただけの代物で、まったく興醒めでしたね。」 「・・・あ、そう。」 「あ、たださんに確認しときたかったんだ。ミスチルの新作は良くなかったですねー。」 「お、おえー?・・・お、おまえ、・・・わしを愚弄するつもりか。」 「今週のカウントダウンTVの1位がミスチルの「sign」で、2位が堂本剛の「ORIGINAL COLOR」でしたね。アジカンの「ループ&ループ」もベストテンに入ってますね。もしかして、たださん、ようやく時代がわしの耳に追いついた、とか、思ってやしません?」 「・・・ぎ、ぎくー。」 「ぼくはメジャーなサウンドが嫌いなんですよ。エンジニアの中庸な手付きが見えますから。それにアーティストの取って付けたようなサルマネに怒りを感じるんです。たださんの耳は、ちっともラディカルじゃなくなりましたねえ・・・。もしかして、大塚愛なんか気に入ってたりしませんか?」 「ぎ、ぎ、ぎくー!」 「やっぱりねー。」 「お、おめー、いつからそんななまえきなくちきくようになったんじゃい。あのなあ、この1年に買ったCD見せてみろ、良かったもの聴かせてみろ、わしがまた真贋を判定してやる。」 「いいですねー。また耳のセッションしましょう。ぼくはいつでもいいですよ。」 「編集CDRを作っておくように。」 「そういうの、できません。たださんがうちに来ていろいろ聴いていったもの全体が、ぼくの編集CDRです。」 「ふーん。いいね、それ。」 「なにがいいんでしょうか。」 「いいんだよ。いつもつまらないものはかけてないじゃん。ひっこめちゃうじゃん。」 「いかに成功していないか、と、お聴かせするものもありますよ。」 「いいの。そうやって聴かせたくなった、てのは、いいんだよ。音楽なんて聴かれてなんぼなんだから。」
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