Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2004年03月14日(日) ジャズ本2冊・菅野邦彦さんのピアノ演奏の衝撃

青土社からジャズ本の新刊が出た。
『ジャズ・ヒストリー』ジョンFスウェッド著・諸岡敏行訳(青土社)\2800
著者はイエール大学の先生。アンソニー・ブラクストンがきちんと登場している、ジャズの通史本、と言えます。
ディスクのセレクトと、そのコメントが啓発されるところが多く素晴らしいものです。

ただ“80年代以降のジャズとその周辺の音楽”に関心を持ってきたぼくとしては、
  『ジャズの明日へ―コンテンポラリー・ジャズの歴史』村井康司著(河出書房新社)\1800
こっちのほうを先に入手することをおすすめします。


来週の21日は下北沢へ”リトル・ファッツ&スィンギン・ホット・ショット・パーティー”のライブへ行く予定。(3・9日記参照)
幕張メッセでアニメ・イベントのため子どもたち全員を引率して上京するので、子どもらにもこのライブを観せることに。

ライブを主催するmizugameさんへ、昨年6月の菅野邦彦さんのライブを観た感想をメールしていた。ここにも置いておこ。
ほんとに凄かったな、あのピアノの指。CDにして残しておいたほうがいいと思う。
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mizugameさん、こんばんは多田です。
菅野邦彦さんのピアノ演奏の衝撃から立ち直れないでいます。狂気を孕んだカクテルピアノ、の、凄みの在り処を感じて帰りました。
菅野さんは自分の弾くピアノを相当に高い水準で自分のものにしていますね。
どの瞬間にも、自分の指が紡ぐ音が、どの音楽(旋律、リズム、ジャンルとかフォーム、その出力の強弱の按配…)へも向かわせることができる「ものすごい自由」を手にしていらっしゃいます。それは天才的な猛獣使いの様相を示していると思います。

ライブは3部構成になりましたが、1部ではその力量をショウのように見せつけて楽しめました。
最初に座った席からは菅野さんの演奏する指先が見えなかったのですが、お隣にいらしたお客様の勧めをいただけて2部からは菅野さんの左後方からの鑑賞となりました。

菅野さんにとって自家薬籠中となった音楽のバラエティの広さは、最盛期のミシェル・ペトルチアーニぐらいしか対抗できないだろうと思えました(現役ピアニストでもユリ・ケインがどうかというくらいで)。ところが、ぼくや、mizugameさんが電気を走らせてしまっただろう「菅野さんの凄味」というのは、きっとそこではないと思います。
2部と3部では、ところどころで瞬間的に猛獣が顔を見せていました。
菅野さんが「自由に」ピアノを走らせれば走らせるほどに、当の菅野さんでさえ制御し切れないで鍵盤に走らせてしまう刹那的な指の動きにそれは顔を出します。

この日の菅野さんはおそらく好調だったと感じます。逆説的に、この猛獣の出現は少なくなり。
それにしてもほんとにこんな凄いピアニストが日本にいるのですねー。とにかく、「追っかけ」たくなりました。
今回のライブの企画、お知らせいただいてありがとうございます。mizugameさんにまたすごいプレゼントをもらった気持ちです。

今年になって聴いたCDで(1日1枚聴きますから200弱)、いちばん良かったのが渋谷毅さんのピアノ・ソロ『アフタヌーン』なのですが(最終
トラックの「ビヨンド・ザ・フレームス」には聴くたびに涙が出てしまいます)、
次回のライブでは高田渡さんと渋谷さんということで、楽しみすぎて切ないです。
でも、告白するに高田渡さんの音楽を耳にしたことがほとんどないわたしです(笑)。
mizugameさんがキティ時代に間章さんと制作した『メディテーション・アマング・アス』が未発表音源も含めて復刻されるのですって?
もう、ほとんどレッド・ツェッペリンのライブ並みにすごい事件ですよ。
素晴らしいものは時間を超えるちからがあるのですね。

ライブの帰りに『en-TAXI』という雑誌を読んでいて、岸信介元首相の言葉を引用した「日本をアメリカ領土に出動させ、軍事怪獣を封じ込め!」という評論があったのだけど、妙に菅野さんのピアノとセットになって響いてきたものでした。
思うに、菊地雅章さんのピアノには(早く弾いたときに何かが起こる!)と、で、菅野邦彦さんのピアノには(遅く弾いたときに何かが顔を出す!)と、そんなことをふと思いついたりします。
2003年7月4日 多田雅範


Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

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