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 2018年06月02日(土)   参/悲の物語 

★刀ステ新作「悲伝」のネタバレになります★



グッズ情報でネタバレが含まれるとして一部商品しか画像が載らなかった時、
載らなかった男士の顔触れから、極が登場することは推察されてました。
今回、12振りも登場するのに、原案ゲームで極が実装されているのは3振りだけ。
(準主役の山姥切は、強引に登場させるなら4月5月と二度もチャンスがあったのに
実装されていないことから登場しないのではないかと私は考えました)
そこに推しの長谷部が含まれてるから、さあ大変。ライブ中継のチケットは
ソワレを取ったので、ネタバレ回避で朝からtwitterを完全に断ち、
水道橋駅からは「大きめの音量で勝ち鬨の歌をリピートする」
「メガネをはずす」(最大のネタバレはグッズ売り場にあると想像できた)と
自衛しながらギリギリの到着となったのでした。一番端の席でしたから!

集大成と大々的に宣伝された今作。終わってみれば過去最高に末満節が炸裂し
(OPのキャストパレードがほぼ完全なニコイチ、旅装束姿を出すなど
本編の展開を先に入れてしまうのはTRUMPシリーズなど末満作品でおなじみの作り)
今までは刀ステは誰にでも薦められたけど、今作は人を選ぶのでは…と感じました。
それ以前に、結末を正確に把握できなくて…翌日に買ったパンフレットの座談会で、
キャストも一度読んだり見ただけでは分からない、と言っていて安心する始末。

三日月がループしているのは虚伝から張られた伏線で予想してましたが、
乱暴に書いてしまうと、想像以上の黒幕っぷりでした。
ループ脱出を望んであれこれ、時には非人道的な(刀にこの言葉を使うのも
おかしな話ですけど)手段まで取ったのに、結局はループ脱出できず…で
合ってるのかな? 最後のナレーションが拡樹さんではなく初めて荒牧さんだったり、
EDが勝ち鬨の歌(!)だったり、それで三日月が歌ってなかったり、
正確な答えが読み取れなくて。お陰で夜遅くまで寝付けず寝不足ですよ。

末満さんが今回ぶっこんだ、とうらぶ創作では取扱注意とされている要素を列記してみます。

・刀剣男士が黒幕(ミュでも三日月は黒幕してるけど)
・本丸が襲撃される
・審神者の登場(顔を黒い布で覆った直衣姿の男性だった)
・男士の同士討ちで破壊寸前(それも三日月が燭台切を)
・審神者がLv.1でもない男士を刀解する
・燭台切が作中唯一の焼刀である事実に触れる

こんなところですかね。ジョ伝でも山伏の破壊台詞を出す、元主に刀を名を呼ばせると
チャレンジャーではありましたが、もうそれが可愛く見えるレベルです。

末満さんは戯曲義伝の後書きで、刀剣男士が何のために戦っているのか懐疑的で、
ただ、それでも、男士と「男士のために造形された元主」との間で
交わされた心情は真実で、舞台にはそれを真実にする力があると書かれてました。

歴史とは何か、刀とは何か、ミュの最新作(むすはじ)もかなり攻めてて、
好意的に受け取れなかったと私は感想を書きましたけど、悲伝に比べたら
土方を史実通り銃弾で殺すというむすはじの任務も甘く感じられます。
むすはじはこれを達成できるのが陸奥守しかいないので、実は最初から結末は見えている。
それくらい悲伝の攻めっぷり(作中で足利義輝は骨喰に介錯される)は壮絶でした。

FGOで言うと三日月は時間軸を渡り歩く武蔵でもあり、終わらない戦いに絶望した
アーチャー(エミヤ)でもあります。FGOでは武蔵は剪定事象を消してしまうし
(2部では主人公も消している感ある)、エミヤはUBWで答えを得ますが、
三日月は…結局歴史は改変されない、なのにどうして戦い続けるのかと思いながら、
何周しても山姥切との対戦を望むという、どこか矛盾した願いを持っています。

小林康子さんの映画脚本すら「おもしろい」と表現した和田さんは、
悲伝を「すさまじい」「壮絶」と語り、椎名さんも攻めていると言っていました。
織田の二振りは、修行も思いのほか丁寧に描かれ、殺陣での見せ場(共闘!)もあり、
比較的描写に恵まれているかなと思いました…刀ステは燭台切のキャラ付けが
世間一般とややずれている(いや政宗組がそうかも)ので…今回も燭台切は
コメディリリーフでもあり、カッコいい場面も用意されてるんですけど。
燭台切が作中では最初に三日月の豹変に気づくんですよね。

本丸は混迷し、三日月に対する姿勢で対立しますが(天下五剣にすぐケンカを売る
大包平の設定が生かされてる)長谷部はどんな時も主が一番なので、
登場キャラの中ではブレが少なく、見ていてなんか安心するところがありました。
主を守る、主の敵は仲間でも躊躇せず破壊する、仲間の心情より主命遂行絶対優先。
三日月と戦うのを躊躇う山姥切を二度もぶっ飛ばすのは、いかにも長谷部でした。
(虚伝から外伝を経てジョ伝で信頼し合ったように見えた山姥切と長谷部が
最終決戦ではやっぱり相反する立場になってしまうところ、切なくも必然というか…)

極になって(思ったよりは背面シンプルだった)刀がフランベルジュになったので、
不動との戦闘も妙に暗いシーンが多く。舞台上が暗いのは末満さんの特色だと
パンフレットのお陰で学びました。輝く刃、かっこよかったですけど。

長谷部の描写については文句ないんですが、全体的な物語に対しては
まだまだ消化不良なので、時間を使って考えたいと思います。
(へし切と呼んでいいのは主だけ、が確認できたのは良かった!)
これが生観劇一発目じゃなくて良かったのかもしれません。

2018.6.3 wrote


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