Land of Riches


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 2003年11月04日(火)   MOVE 

誰かが言った、人間を特色づける固有の能力は感情移入あるいは共感(シンパシー)だと。

新しいページで使おうかと思って、宝物―人からいただいたものは何でも大切だけど
中でも指折りのトレジャー3つ―の写真を撮ったら、それが自分の(サッカーファンとしての)
過去に明確な区切りがあるのを教えてくれました。フランスワールドカップ、
ナイジェリアワールドユース、アルゼンチンワールドユース。地球の裏側へ壊れた心の
破片を埋めることさえ許されなかった私は、その後サッカー観がガラリと変わり、
現在へ至るのですが、その過程で別の趣味を作り、そちらのサイトも作っていました。
ZEPHYRはじめサッカー系が軒並み更新停止となる中で、そこだけは更新していたのですが。

それも、もうおしまい。多分…残されたたった一つの金貨が奇跡を呼ばなければ。

思うに、何にも接しないようにしなければ、決して傷つきもしないでしょうが、
決して満たされもしないでしょう。その状態を魂の平安(アタラクシア)と呼べる
エピクロス派には到底なれそうにありませんから、私はむしろ情念(パトス)に
動かされない状態―アパテイアを求めています。情念を理性によって制御して、
自分を理想的な状態にあらしめるように。すぐに傷ついたりむくれたり怒ったり
愚痴ったり傷つけたくなったりする、もろもろの衝動的な感情を抑え込んで、
周りも幸せにできるような、幸福な人になりたい。高すぎる理想だけれど、今の私は
それを既に望んで“演じて”いる節があります。もっとも、周りの感情を気にするあたり
私は日本人の特性である感情融和の優先、つまり「わたくしなき清らかさ」をも
求めている気がしますけど。なぜって、自分の理想に外れている現状を“醜い”と感じるから。

連休はどのジャンルへ首を突っ込んでも辛い話題ばかりで、当然のように睡眠時間の
細切れ化は進行し、昨夜は仕方なくビデオテープの整理を強いられたのですが、
なんで存在するのか分からないものもたくさんありました。つまり、その試合(あるいは番組)の
価値が、自分の中で低下しているのです。例を挙げるのはどうかと思いますけど、
たとえばカードもすっかり忘却していた1年前のインカレ決勝とか。情けない話ですが。

一番のショックは、今朝、久しぶりになんとなく見た「めざましテレビ」で
目撃してしまった移籍会見での小久保さんでしょう。我の強い(昨日も書きましたが、
脱税の前科もある彼が金にこだわっているのは否定しません。正当な評価による
正当な報酬を彼は望んでいるのです。それを得るために黙々と練習し、フロントとの
やり取りでも決して屈しません)小久保さんが、感情を無理やり押し殺しているのに、
その怒りとも形容し難い感情が、双眸から決壊しそうになっているさまが、あまりにも
衝撃でした。横ではオーナーが泣いているのに、その涙を有名無実に軽くできる、
何もかもを飲み込んだ姿が。一体、彼はジャイアンツの入団会見でどんな顔をするのでしょう?

あまりにあってはならない表情は、鹿島で、血が通った人間のする顔とは思えぬ
表情を浮かべてばかりいる人(ナビスコ決勝で彼が犯した退場は愚かだとは思いますが、
もはや表情とも呼べない顔をしたままチームを一身に背負っての―負傷者の幻影さえ
まるで背負っているかのように―苦闘を強いているのは誰なんだ、と叫びたいです。
昔あんな風ではなく、ちゃんと彼なりに人間として感情を表現できたのを知っているから)を
見慣れている身にも、衝撃でした。自分でもスポ新を買い、オフィスでも頼み込んで
別の新聞を読ませていただきましたが、前代未聞の“チームの精神的主柱・幹部候補生の
無償譲渡”が成された真の理由は、今のところ表には出てきていません。

小久保さんは淡々と自らの感情―紆余曲折を封じ、両チームのフロントの間でも
形式的には何も動かない中では、誰が悪いだの得しただの損しただのは定められませんが、
間違いなく小久保さんを慕ってまとまっていた人、つまりホークスの選手やファンは
傷を得たのです。小久保さん本人の思いがどうであったにしろ。そして、小久保さんにも
傷ついた人たちを心配する思いは確かにあって。一体、球団やらFAのレギュレーションは
何のためにあるのかと。いくら観客が押しかけても、球団経営には何ら貢献しない、
これは事実かもしれません。けれど、プロスポーツは選手の活躍によって。
見る人たちの心揺さぶることによって対価を得て成り立っているはずの産業。

屈辱の4失点も必然かと思わせるような布陣で戦わざるをえないような状況へ
アントラーズを追い込んだフロント(でも、それでも選手は必死に戦ったのですが)や
優勝会見を辞任表明に変えてしまうようなレッズフロントもどうかと思いましたが、
どうしてこう、プロスポーツチームのフロントは、本来、その世界が現実の秩序とは
乖離した夢の領域だと(少なくとも、だからこそ選手の高額年俸は認められているはず)
認められないのでしょう。不況の中では、理想を唱えるのは難しいと無論分かってますが…。
いくら著書でそう叫んでいたとしても、言動不一致極まりなし、だなんて。

それとも、オリンピックの汚染が指摘されて久しいように、プロスポーツ界も
円相場や株式市場のように、マネーゲームの一つのフィールドでしかないのでしょうか?

U-20最終選考合宿のメンバーが発表されました。監督が公言していた通りの、
今まで試した選手は(負傷離脱中の貴章さんを除いて)まとめて呼んでみました、と
いった印象を受ける、30人近い大所帯。オーストラリア戦の登録メンバーは20名、
週末のJ出場組はここで一度離脱して、17日に発表される本大会メンバーは
18+3名となります。結構な数が落ちることになります、当然は。今は、どの選手も
ベストコンディションで最終選考を乗り切れるよう祈るばかりです。闘争心は、無論、必要。


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