橋本裕の日記
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2008年02月13日(水) 野鳥の死

 先日、妻が用水路で動けなくなっている鳥を見つけた。「助けてやりたいので、あなたも手伝って」と言われて、私も自転車で現場に出かけた。

 黄色い嘴と脚をしたかなり大きな鵜のような鳥である。あまり見かけない鳥なので名前はよくわからない。妻が長靴をはいて近づいていくと逃げようとするが、少し歩いただけでよろけて倒れてしまった。妻がその鳥を抱きかかえて、私に手渡した。

 私はその鳥をすかさず用意した箱の中に入れたが、その瞬間、恐怖感に襲われた。先日NHKで放送していた「鳥インフルエンザ」の特別番組を見ていたからだ。もしこの鳥が病気だったら、その病原菌が私に汚染しないとも限らない。そして私から他の人に伝染したら大事になる。

 以前、我が家で鶉を飼っていた。そのとき、世話をしていた妻と長女があいついで原因不明の熱を出して、一週間ちかく病院に入院した。そのとき私は病気の原因はこの鳥ではないかと思った。やはり鳥を飼っていて、同じような症状で入院した人を知っていたからだ。

 妻が病院の先生にこのことを言うと、「その鳥はいま元気ですか」ときかれた。「元気です」と答えると、「それなら大丈夫でしょう」と言われたという。しかし、宿主の鳥には悪さをしなくても、それが人体に入ると害を及ぼすということもあるのではないだろうか。

 我が家の鶉はハルコと呼ばれ、居間で放し飼いになっていた。そんなことがあって、私はハルコに近づかないことにした。おかげで私は原因不明の高熱を出すことはなかったが、今回触れたのは、もっと得体の知れない野鳥である。しかもあきらかに体が弱っていた。

帰り道そのことを妻に言ったが、「しかたがないわよ。助けないわけにはいかないのだから」と軽く受け流されてしまった。そこで、渡り鳥は病原体の巣だと思ってよいし、これに触れることは疫学上かなりのリスクを犯すことになることをNHKの番組を例に引きながら力説した。そのかいがあって、妻は「これからはもう助けないことにするわ」と理解してくれた。

妻はその鳥をさっそく近所の獣医まで運んだが、「野鳥は診ません」ということで、玄関払いになった。これは当然だ。獣医だって、病気の野性の鳥など怖くて触りたくないのではないか。

鳥はやがて死んだ。妻はそれをダンボールごと畑に埋めた。妻によると、その鳥は嘴に異常があったようだという。だからエサが充分食べられなくて、結局のところ餓死したのではないかということだった。

病死でないかもしれないと聞いて、私は少しほっとした。それからそのあわれな鳥のことを思い出して、心の中で両手をあわせた。


橋本裕 |MAILHomePage

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