橋本裕の日記
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2008年02月07日(木) 破格のたのしみ

去年は毎日一首ずつ短歌を作った。数年前には毎日俳句を作った。私はこういうふうに毎日何かをこつこつするのが好きである。決まった時間に起床して、日記を書き、散歩をする。こうして型にはまった生活をするのが、昔からの私のスタイルになっている。

外から眺めると、こういう生活はいささか窮屈に見えるかもしれない。不自由なつまらない毎日のようだが、じつはこの型にはまった生活の中に意外と大きな自由がある。短歌でも俳句でもそうだが、定型の枠があって、むしろそれが自由を作り出す培地になっている。

不自由の中に自由があるというのは、ちょっと不思議だが、考えてみれば書道でも茶道でも能でも狂言でも、およそ日本の芸事はみんなそうした側面を持っている。そしてこれは芸事の世界だけではなく、学問や遊びもすべてルールがあって、そのルールに従うことでおのおの独自の自由な空間を作り出している。

自由は決して勝手気ままなものではない。自由は何らかの枠や制約があって、はじめて生み出されてくる。したがって、そこには学習や習熟といった経験的な要素も大切になる。毎日こつこつ勤しむという私のスタイルは、学問や芸事には都合のよい生き方ではないかと思う。

そして、型にはまった生活には、もうひとつ楽しみがある。それはこの型を破るという楽しみだ。ときにはハメをはずして冒険をしてみる。そのわくわくする気持が味わえるのも、日頃型にはまった生き方をしているからだ。格を知らなければ、「破格のたのしみ」も味わうことはできない。


橋本裕 |MAILHomePage

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