橋本裕の日記
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NHK教育テレビに「人生の歩き方」という番組がある。作家や学者、俳優、プロレスラー、歌手、実業家など、各界で活躍したさまざまな人の波乱万丈の人生の歩みが紹介されていて、私のように人生経験の浅い人間は、見ていて大変参考になる。
先日の番組「宮本輝 流転の歳月」(4回シリーズ)では宮本輝さんの作家人生が紹介されていた。古屋和雄アナウンサーのインタビューに答えて、宮本さんが自分の人生を赤裸々に語っていて、なかなか見ごたえがあった。
最終回の放送で、宮本さんはこんな印象的なことを語っていた。彼は若いときにある人から「50歳を過ぎた人間の情熱しか信じない」といわれ、そのことをずっと考え続けたのだという。
そして47歳のとき阪神淡路大震災で九死に一生を得、それから鳩摩羅什 (くまらじゅう)の業績をしのびながら、過酷なシルクロードを40日ほどかけて歩く中で、自分自身50歳を過ぎて、この言葉がようやくわかってきたという。
<50になるということが、ものすごくありがたいことのように思えた。これまで、ただ生きていたんじゃない。偶然じゃない。これはすごいことなんだ、ということ。
人生には何ひとつ無駄というものはない。あのとき思い通りに行かなくてよかったなあ、と思うときが必ずくる。自分がこれでもうおしまいだと思ったり、悲観して俺はもう駄目だ、廃人だと思ったこともある。でも、それが本当に、ものすごくありがたい、宝物のように思えてくる>
人生は思うようにはいかない。若い頃はそれを残念に思い、自分はなんと悪い星のもとに生まれたのかと、世間をうらんだりする。しかし、そうした「思い通りにならない人生」こそが、ほんとうに大切な人生の宝物だということに気づく。
私も50歳を過ぎて、「因縁」ということを深く考えるようになった。そしてよくもまあ、この年まで無事に生きてきたものだなあ、という感慨を覚えることが多い。「ありがとう」とたくさんの存在にたいして頭を下げたい気持になる。
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