橋本裕の日記
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人とすれ違うとき、お互いに少しずつ譲り合う。これが大人のエチケットだと思うが、世の中には絶対に譲らないという頑固な人もいる。たとえば狭い道を車ですれ違うとき、相手が譲らないので、仕方なく路肩に車を寄せて溝の中に車を脱輪させたことがある。
その車は走り去ってしまった。腹が立ったが、こちらが譲らなかったら前面衝突事故になっていただろう。命知らずの無謀運転というしかないが、世の中にはそんな人もいるのだと、あきらめるしかなかった。
あるいはこんなことも経験した。前の車につづいて駐車場に入ろうと路肩に止まっていたら、いきなり前の車がバックしてきた。予想していなかったのであわてた。そして警笛をならそうとしたが、ときすでに遅く、はでな音を立てて衝突した。
前の車の運転席から中年の女性がすぐに降りてきた。こういう場合は、まず「すみません」と謝るものだろう。ところがその女性はこともあろうか、「あなた、私の車がバックするのが見えなかったの」と平然と言う。車がいきなりバックしたときも驚いたが、それ以上にこの女性の無神経さに驚かされた。
世の中にはこうした傍若無人な人がいくらも存在する。たとえば、妻と散歩をしていて、ある男性とすれ違った。妻が言うにはその男は絶対に自分から道を譲らないそうである。私がその男と散歩中すれ違うことは滅多にないので、「ほう、そうかい」と軽く受け流していた。
しかし、ある日、たまたま向こうから歩いてくるのがその男だった。そこでわざと、その男とおなじ路肩を歩いていった。男は腹を突き出して、どうどうと歩いてくる。まったく道を譲る気配はない。しかたなく、寸前に私が身をかわした。妻のいうことは正しかった。
ところでこれには後日談がある。数日前のことだが、妻がその男とであったとき、妻も道を譲らないことに決めてまっすぐ歩いて行ったのだという。その結果どうなったか、さすがに男は寸前で身をかわした。つまり妻がこの時点では勝ったわけだ。
しかし、これには痛い落ちがついている。男は少し身をかわしながら、妻の片足を踏みつけて行った。妻が「痛い」と叫ぶと、「すみません」と涼しい顔で受け流して通り過ぎたという。
これはなかなかのつわものである。この勝負、痛い目を見た妻の分が少し悪いようだが、とりあえず妻の勇気をたたえておこう。
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