橋本裕の日記
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2008年02月01日(金) 三つの幸福

 フィリピンのセブ市の語学学校で学んだ英文の教材のなかに、「三つの幸福」と題されたエッセーがあって、これが今でも心に残っている。

第一の幸福は「欲望を満たすことによって得られる幸福」である。人はうまいものを食べたいとか、美人と交際したいとか、出世したいとか、さまざまな欲望を持っている。こうした欲望を満たすことで得られる幸福である。これを「欲望充足の幸福」と呼ぼう。

 第二の幸福は、「欲望から自由になることによって得られる幸福」である。欲望はきりがない。だから食欲、性欲、所有欲や支配欲と言った欲望にふりまわされていては、私たちはいつまでたっても心の安らぎは得られない。

そこである人々はこの欲望を抑制し、自らのエゴを捨てようとする。そうすることで私たちの魂に平安が訪れると説く。欲望から解脱できれば、何事にも囚われない「色即是空」のさわやかな境地を得ることができる。これを「欲望解脱の幸福」と呼ぼう。

 第三の幸福は「他者を愛することによって得られる幸福」である。人と人とが心を通わせ合い、助け合って生きていくなかで得られる喜びだ。これはエゴを離れている意味で第二の幸福と共通しているが、さらにその上にたって他者を愛するという積極面を持っている。あえていれば、「空即是色」の豊かさと色彩に満ちた幸福である。

算数でよく訊かれるのが、「なぜ、マイナスかけるマイナスはプラスになるか」という質問だ。これにたいする答えのひとつに、「否定の否定は肯定だから」というのがある。私たちは煩悩を否定して「空」の世界に入る。しかし、そこに安住しないで、もう一度「空」そのものを否定することで、再び現実の世界に回帰する。そしてそこで得られるのがすべてのものが光り輝く「愛の世界」である。

私にこれを教えてくれたのはジェニー先生だった。私たちはこのテキストを読みながらが、いろいろと「幸福とは何か」ということについて議論したが、敬虔なキリスト教徒ジェニーは、愛の中でももっとも素晴らしいのは「神に対する愛」だと主張した。若くて溌剌とした彼女に東洋的な「空」の思想を理解してもらうのはむつかしかった。

(参考)
「セブ島留学体験記」
http://hasimotohp.hp.infoseek.co.jp/cebu.htm





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