橋本裕の日記
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自由主義市場経済の原理をわかりやすく言えば、「お金儲けがすべて」「稼ぐが勝ち」ということだ。人間の価値も「年収」や「資産」で計られる。ようするにマネーゲームに卓越して巨万の富を築くことが、この世界でもっとも成功した生き方ということになる。
少し前まではそうではなかった。もちろんお金儲けを生きがいにしている人もいた。しかし、世間にはいろいろな生き方があり、またいろいろな価値観が存在した。だから、物質的にはゆたかとはいえず、生活に追われていたが、それでもひとびとの心はもっと多様で、自由度があった。
60年代後半から日本は世界の奇跡とよばれる高度成長が続き、80年代には庶民の生活も豊かになった。そして、日本は世界有数の経済大国になったが、どうもその頃から、「お金がすべて」という考えが次第に私たちの間に浸透してきたように思われる。
80年代後半になると、書店の店頭には「いかに資産を増やすか」という本がたくさんならび、ふだんの会話にもそんな話題が多くなった。勤労所得よりも不労所得が上回り、土地成金が高額納税所得者の上位を占めるようになった。
その一方で、「清貧の思想」などという本も売れたが、大方の人は「いかにお金をもうけるか。財産を増やすか」ということに熱心だった。土地を担保にお金を借りて、株や住宅に投資する人もいた。こうしたなかで土地は値上がりし、株価もうなぎ上りに上昇した。「株をやらない者は世捨て人だ」と書く経済評論家が現れ、ベストセラーになった。
さいわいバブルがはじけて、この風潮が少し後退した。お金もうけがすべてではなく、いろいろな生き方があっていいというふうに人々の意識が変化してきた。バブルの崩壊をとおして、日本社会がいくらか文化的に成熟したようだ。
しかしまだまだ世界はアメリカを中心にマネーゲームがさかんで、「お金がすべて」という風潮が蔓延している。その結果、石油や穀物が高騰し、サブプライム問題も起こってきた。世界が今後どのような方向に動いていくのか興味がある。
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