橋本裕の日記
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言葉の学習で大切なことは何か。それは「言葉は気持を伝える」という基本を見失わないことだ。異国語の学習のときも、このことは留意すべきだろう。
(1)I am happy. (しあわせだ)
そうすると、相手は「Why?」(どうして)と尋ねるに違いない。そこでその理由を述べる表現を次に学習する。
(2)Because I am healthy. (なぜなら、健康だから)
ところで、この(1)と(2)の表現は一つにあわせることができる。それが(3)の表現である。
(3)I am happy to be healthy. (健康なので幸せだ)
まずは(1)と(2)の表現をマスターし、(3)に進むというのが自然な順序であろう。
(1)I am glad. (うれしい)
(2)Because I saw you. (なぜなら、あなたと会ったから)
(3)I am glad to see you. (あなたに会えて、うれしい)
(1)I am sorry. (かなしい)
(2)Because I heard the news. (なぜなら、そのニュースを聞いたから)
(3)I am sorry to hear the news. (そのニュースを聞いたので悲しい)
(1)I am exited. (興奮している)
(2)Because I wined the game. (なぜなら、そのゲームに勝った)
(3)I am exited to win the game. (そのゲームに勝ったので興奮している)
文章は基本的に「気持を述べる部分」と「その理由を述べる部分」からできていると考えられる。英語の場合、とくにこの「自分の気持を述べる」ということが最初にくる。そしてそのあとに、その理由を述べる部分が続く。
もっとも、「自分の気持を述べる」という部分があらわでない文章もある。つぎのような一見事実だけを述べた文章の場合だ。
I have a pen.
直訳すれば「ペンを持っています」だが、この文章はまずこう訳されることはないだろう。それではではこの文章はどう訳したらいいのか。
文章を正確に訳そうとすれば、その言葉が語られた状況のなかに戻してやらねばならない。なぜなら言葉というのはその語られた状況の中でしか意味をもたないからだ。
たとえば、となりの人が書類を書こうとしてペンがないので困っているとする。そこで、この言葉を私が発したとしよう。その場合は「ペンをお貸ししましょうか?」という提案の意味になる。
I have a pen. (ペンをお貸ししましょうか?)
このように、たとえ事実だけを述べている文のように見えても、実のところ気持を表している。そして、その気持を読み取るということが、言葉を理解するということである。
言葉の意味について、それは「言葉がさししめす対象である」という理解が一般的である。しかし、これも「言葉は気持を伝える」という観点からすると、いささか問題がある。
たとえば、道を歩いていた女性が追いはぎに襲われ、鞄をとられたとする。このとき女性が他の通行人に向かって「泥棒」と叫んだとしよう。この「泥棒」という文の意味は何かという問題である。それは「その男を捕まえて下さい。泥棒なのですから」ということだろう。
人がどういう気持で言葉を発するのか、言葉の意味はその人の気持と無縁ではない。言葉を理解するためには、意味というのは客観的に辞書の中に存在するのではなく、語られた現場において生成するものであるという認識が必要になってくる。
(今日の一首)
駅を出て妻の迎える車まで 夜道を行けば月がほほえむ
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