橋本裕の日記
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2007年06月20日(水) |
「夜回り先生」の言葉 |
水谷修さんは定時制高校で社会科の先生を長いあいだやってきた。そして92年の頃から深夜の繁華街に子どもたちに合いに行くようになった。
04年に刊行した「夜回り先生」がたちまちベストセラーになり、水谷さんはその年の9月に教師を辞めて、いまは講演活動や著作活動を通して、青少年の非行や薬物汚染防止に尽力している。
水谷さんの講演会や「夜回り」の様子は、NHKでも「夜回り先生」と題して放送されたことがある。そのビデオがあったので、去年1年生の「総合」の時間に生徒たちに見せた。
横着な1年生の生徒たちが一同に会し、かなりさわがしい総合の授業が、このときばかりは静かになった。前半だけ見せるつもりだったが、「もっと見たい」という生徒たちの要望をいれて、次の「総合」の授業で後半も続けて見せたが、教室がしんとしていた。中には涙を流している生徒もいた。
たまたま喫茶店で週刊ポスト6/22号を読んでいたら、そこに水谷さんのインタビュー記事が載っていた。そのなかから、水谷さんの言葉をいくつか拾ってみよう。
<子どもは親を憎んでなどいない。何をされてもいつかは愛してくれると信じているんだよ。だからこそ親は親であることに甘えちゃいけないんです>
<子どもを産んだだけでは親じゃない、教員資格をとっただけでは教師じゃない。子どもたちに生きる力を与えられて、初めて親であり、教師なんです>
<たしかに心に余裕がなくて失敗することもありますよ。そんなとき素直に「ごめんね」と言える人間に、まず大人がなってみせることが僕には大事だと思う。ごめんのひと言が言えない大人が今は多すぎますよ>
<子どもを信じて、裏切られたら泣けばいい。応えてくれたら笑えばいい。その泣き笑いに、子どもは生きることを学ぶんです>
<悪さをする子も、暴れる子も、そばにいさえすれば、その子の哀しみが透けて見える。親からも社会からも叱られ続け、否定され続けてきた彼らを、怒っても仕方がない>
<先人は子どもは10褒めて、1叱れと言ったけれど、今の子どもは既に10叱られているから、100褒めなくちゃ間に合わないんです>
安倍総理の諮問機関である「教育再生会議」は、「道徳」を正式な教科に格上げしようと提言している。しかし「道徳」や「愛国心」を先生が教室で教えれば、非行やいじめが少なくなるのだろうか。
「夜回り先生」は、子どもたちがなぜ非行に走り、辛い思いをしているか、それは親や社会の「愛情不足」であるという。私も30年近く教師をしてきて、切実にそう考えるようになった。
(今日の一首)
七転び八起きの人生どこまでも 転んでわかる人のやさしさ
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