橋本裕の日記
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2007年06月07日(木) 年金は全額国庫補助で

 年金記録の不備が5000万件というのには驚いたが、今日の複雑な保険制度のもとでは、こうした不備はあるていど避けられないのではないだろうか。私は以前より、年金は全額国庫補助にすればよいと主張してきた。

 つまり60歳、もしくは65歳になったら、国民は一律にきまった額を老齢年金として受け取るのである。たとえば65歳になったら月5万円の年金を支払うことにしよう。そうすると納税者の負担額は、現在の国民年金の保険料である13,580円とほとんどかわらない。

 5万円だと夫婦で月10万になる。年間で120万円である。これで生活するのは大変だが、国が保証するのはあくまで最低レベルの生活でよい。老後にもっとよい生活をしたければ、貯蓄をしたり、民間の年金に入ればよいわけだ。

 現行制度にくらべて、支給額が1万8千円ほど少なくなるが、現行の制度では今後、年金の受給資格のない人たちが増えてくる。こういう人たちも5万円の年金を一律に支給されるわけだから、低所得者は大変たすかる。現在急増中だという高齢者で生活保護を受けている人を減らすこともできる。

 年金の掛け金を払わず、老後になって生活保護を受ける人が増えている。正直に掛け金を払った人が、払わなかった人より少ない給付金で生活しなければならないという矛盾も現れている。こうしたことは勤労意欲を減退させ、モラルハザードの原因になる。最初から全員に5万円給付するシステムの方が公平だ。

 全額国庫補助にすれば年金業務が簡素化されて、公務員の仕事を減らすことができる。それから年金基金といった天下り先が必要なくなる。特殊法人もいらない。もちろん今回の社会保険庁のような不祥事は起こりようがない。こうしたことで、年金に関する行政コストは限りなく0にすることができる。これによって、年金未納問題も解決し、若い世代に年金負担のしわ寄せが回避できる。

 企業にとっても朗報だ。これまで勤労者と折半で払っていたお金を払わなくてすむ。これは雇用形態を正常化するのに大きなたすけになるだろう。問題は、これまでまじめに保険料を払ってきた人たちの扱いだが、これはしかるべき金利を上乗せし納付者に戻せばばよい。

 国民年金の場合、加入していても払わない人や、未加入の人が年々ふえている。2001年度でこれが400万人だ。これらの人に免除されている人たちも加えると、4割の人たちが国民年金を払わなくなっている。とくに、20代から30年代の国民年金納付率を見ると、50パーセントを割っている。

 その一方で、未加入者の6割、未納者の5割は個人年金や生命保険に加入している。つまり、公的年金はもうあてにせず、自己責任で老後を考えるという人たちが増えているわけだ。現在の年金制度は若い世代の保険料で高齢者の給付金をまかなうという賦課制度になっている。しかし保険料収入では支出をまかなえない状況だ。しかもこの赤字額が拡大している。

 この赤字を補填するために、国民年金については国庫補助を1/3から1/2に上げるわけだが、それでも格差そのものが残る以上、将来さらに厳しい状況に追い込まれることは必死だろう。こうした矛盾を解決するには、思い切って全額国庫補助にするしかない。くわしいことは以前に「年金問題を考える」に書いたとおりである。

 http://hasimotohp.hp.infoseek.co.jp/nenkin.htm

(今日の一首)

 壊れ行くこころをかかえ子どもらは
 苦しんでいる救われぬまま


橋本裕 |MAILHomePage

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