橋本裕の日記
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2007年06月06日(水) ずさんな年金行政

 少し前に民間の保険会社の保険料不払いが明らかになり、その悪質な手口に憤りを感じたが、今回は社会保険庁のずさんな仕事ぶりが次々とあからかになっている。基礎年金番号に統合されていない年金記録が5000万件もあるという。私は5000件かと思っていたが、4桁も違っていた。実にこれは国民の4割に相当する数字である。

 これは手書き台帳からコンピューター入力したさいのミスや、市町村から社会保険庁に届いた書類そのものの不備などが原因だというが、数があまりに膨大である。とても単純な人為的ミスとは思えない。システムの根幹にかかわる問題だとしか考えられない。

 これを放置した庁や行政府の責任は重大である。しかもすでに手書き台帳は上の指示で処分されている場合が多いという。安倍首相は国会で「保険料を払ったことを証明できれば年金を払う」と答弁したが、「保険料を納付した」という領収書も個人の手元にかならずしも残っていない。そもそも役所のミスを、なぜわれわれ国民が尻拭いしなければならないのか。「救済措置」などというが、そもそもわれわれは救済されるべき対象なのだろうか。

 今後も大量のデータが正しく処理されることはなく、行き先不明で宙に浮いたままになりかねない。この結果、本来受けとれるはずの年金より少ない額が支給されたり、年金の受給資格そのものが得られないという「年金支給漏れ」問題がすでに起こっている。これからその数はますます増えそうだ。

 こつこつと保険料を支払いながら、それに相当する年金が受け取れない人が何百万人と出てくる。安倍首相はこうした人たちを「救済」するために当面60億円必要だというが、「週刊ポスト」の試算によれば、保険金未払いの額は20兆円にもなるだろうという。60億円で済む話ではない。

 また、保険料未払い問題で行政処分を受けたある大手の生命保険会社の場合、数百万件の物件を精査するために要した費用は1000億円にもなったという。安倍首相は10億円が必要だというが、5000万件もの物件を本気で精査しようとすれば、この額ですむとは思えない。その莫大な費用も私たちの保険料から出て行くのだろう。

 じつは我が家でも社会保険庁の杜撰さについてあきれた経験をしている。長女が大学に入学し、さっそく年金の支払い猶予の手続きをすました。しかし、長女が大学を卒業する頃になって、「年金が不払いです」という通知が我が家に届いた。妻がおどろいて、「支払い猶予の手続きをしました」と電話をしたところ、「そのような記録は残っていません」といわれた。

 そこで、妻は長女の年金手帳を探し出した。そこに支払い猶予の手続きをした日付と担当者の名前がメモしてあった。それを見ながら電話口で、「何月何日にそちらに伺い手続きをしました。そのときの担当は何何さんです」と告げたところ、役人の態度が一変し、「申し訳ありません」と急に下手になった。

 同じようなことが、次女の場合も起こった。さすがこのときは妻も怒り心頭に達したという。そのことを聞いて、私も「こんな杜撰な役所は信用できない」と思ったが、今回の5000万件もの年金記録不備事件である。社会保険庁はここまで無責任で腐っていたのかと、怒りを通り越してなんだか悲しくなってしまった。

(今日の一首)

 紫陽花のさ青にひかれ立ち止まる
 いのちなりけりこころふかまる


橋本裕 |MAILHomePage

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