橋本裕の日記
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昔から、勉強は好きだったが、学校はあまり好きではなかった。それはいろいろなことを強制されるからだ。そしてテストをして、何かと他の生徒と比較をする。強制されたり、人と比較されることが不愉快だ。テストも苦手である。何だか息苦しくて、過呼吸に襲われそうな気分になる。
学校を卒業してこの息苦しさから解放された。いちばんうれしかったことは、もうつまらぬことを強制されたり、テストを受けなくてよいということだった。ところが、どいう縁か、学校嫌いの私が教師になって、生徒を強制したり、テストをつくる側になった。どうも人生は思うようには運ばない。
私のクラスに教師になりたいという生徒がいる。その理由を聞くと、「中学校や高校で教師にひどいことをされたり言われてとても傷ついた。いじめをうけていても先生は見て見ぬふりだった。これでは生徒がかわいそうだから、僕が先生になって、僕のようなつらい思いをしている人たちを救ってあげたい」ということだ。
ちなみに彼は、退学になった高校に復讐した。夜中に進入して、ガラス窓を壊したり、器物を破壊したりした。警察に捕まり、鑑別所に送られたが、そこでいろいろ考えたようだ。そして感情に任せて短絡的に復讐しても何の益にもならない。自分が立派な人間になることで自分に冷たかった学校や社会を見返してやりたいと考えるようになった。彼は夜間高校にやってきて、ガソリンスタンドで働きながら、今は私のクラスでがんばっている。
夜間高校には、経済的な理由で昼間の高校に行けなかった生徒のほかに、こうした学校嫌いの生徒、学校や教師に反感を持っている生徒、学力やいろいろな面で学校に適応できなかった生徒たちも多くやってくる。登校拒否やひきこもりの子どもたちの受け皿にもなっている。だから、昼間の高校とおなじことをしていたら、夜間高校の教師はつとまらない。
大切なのは、まず学校に対して、不信感や反感、恐怖心を持っている生徒の気持ちを理解できることである。この点で、私は同じようなみじめな思いをかずかず経験しているので適任ではないかと思っている。というより、私自身が教師を続けていられるのも、じつは夜間高校のおかげである。明日はこのことについて書いてみよう。
(今日の一首)
人生に恋していたりこの頃は 見るものすべて美しきかな
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