橋本裕の日記
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2007年05月10日(木) 癌死も生命の摂理

 厚生労働省の「平成17年人口動態統計」によると、日本人の死亡数108万人のうち、32万人以上の人がガンで死んでいる。死因を多い順に並べると、悪性新生物(癌)についで、心臓疾患、脳血管疾患、肺炎と続いている。

1  悪性新生物  ……325,941人  (30.1 %)
2  心疾患     ……173,125人  (16.0 %)
3  脳血管疾患  ……132,847人  (12.3 %)
4  肺炎       ……107,241人   ( 9.9 %)
5  不慮の事故  …… 39,863人   (3.7 %)
6  自殺       ……30,553人   (2.8 %)
7  老衰       …… 26,360人  (2.4 %)
8  腎不全      …… 20,528人   (1.9 %)
9  肝疾患     ……16,430人   (1.5 %)
10 糖尿病      ……13,621人   (1.3 %)

 ガンの部位別で見ると、男性の1位は肺ガンで、4万5千人(女性では3位で1万7千人)が死んでいる。肺ガンと診断された人の平均生存期間は9ヵ月、1年生存は20%、5年生存は8%だそうだ。肺がんや喉頭がんは喫煙との因果関係が考えられる。喫煙者の喉頭がん発生率は喉頭がんで22倍、肺がんで12倍、食道がんで7.5倍だという。

 体に悪いとわかっていてなかなかやめられないのが喫煙である。私の友人で、「喫煙をやめると、ストレスがたまる。だから、よけいに癌になりやすくなる」と主張する人がいる。小野寺時夫さんの「がんのウソと真実」によると、これは科学的根拠のない迷信だそうだ。「がんになった人はみな、どうしてがんになったのかと悩み、過去の生活の影響を考えがちになると思いますが、ストレスや性格が大きな原因とは現時点では考えにくいのです」と書いている。さらにこうも書いている。

<喫煙が、がんの発生を促進することは疑いありません。しかし、喫煙を続けて、100歳を超えても元気な人がいる一方、喫煙しないのに三十歳代で肺がん死する人もいます。このように、癌は他の病気と違って、注意しても予防できない運命的な要素が強いといえます>

 それでは癌はどうやって作られるのか。私たちの体は60兆の細胞からできていて、毎日8000億個もの新しい細胞が作られている。このなかに母細胞と違った細胞がある。その数はじつに100万個だという。これが癌細胞のもとになる。小野寺さんの本から引用しよう。

<発がん物質と言われる、強い放射線や紫外線、熱、ある種のウイルス、タバコのバンツピレン、PCB、ダイオキシン、アスベストなどの作用が続くと、とくに遺伝子が傷つけられて、元の細胞と著しく格好の違った細胞が作られる率が高くなります>

 こうした理由で毎日100万個も生まれている変異種の細胞の多くは細胞の核にあるがん抑制遺伝子の働きで正常細胞に修復される。しかし、この遺伝子の働きが弱いと、この変異種の細胞が生き残る。

 もっとも、これらの生き残った細胞にも険しい前途が待ち受けている。今度は体の免疫力を担当するリンパ球が、これを異物だと感知し、仲間を大急ぎで増やして総攻撃をかけてくるからだ。リンパ球の猛攻撃によって、この変異種の細胞はほとんど全滅させられる。

 ところがまれに、細胞分裂でさらに自分の姿を変えて、このリンパ球の眼をくらます細胞が現れる。これが癌細胞である。リンパ球もこれにはお手上げである。癌細胞はゆっくりと増殖し、100万個くらいになると、1ミリ程度になる。ここまでになるのに普通は20年から30年ほどかかるので、発見された癌が1年や半年前に発生したわけではないのだという。だから老年になると、癌が多くなる。

 なぜ癌が生まれるのか。小野寺さんは「がんは誤って発生したのではなく、もともと人の命をコントロールするように仕組まれているのです」と書いている。癌もまた集団の新陳代謝を促進するために自然界が用意した個体抹殺の仕組みである。大自然の見地に立って眺めれば、癌の発生も「人間があまりに長生きしすぎないように、個体の寿命をコントロールする生命の摂理」ということなのだろう。

(今日の一首)

 真夜中に目覚めてみればハエひとつ
 鼻から降りて頬を歩けり

 うるさいハエだなと思いながら、また眠ってしまった。そのハエがいまも私の肩に止まっている。私を大きな餌だと勘違いしているのだろうか。なれなれしい蝿である。蝿に好かれても少しもうれしくない。


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