橋本裕の日記
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2007年04月27日(金) |
フランス大統領選の行方 |
4月22日に行われたフランス大統領選挙で、セゴーレ・ロワイヤル候補(53)が25%の得票率で、民衆運動連合(UMP)のニコラ・サルコジ前内相(52)の31%についで2位となった。この両者で5月6日に、決戦投票が行われる。フランスに初の女性大統領が誕生するかもしれない。
彼女はENA(フランス国立行政学院)を卒業して行政裁判所判事になった。その後、下院議員となり、ピエール・ベレゴボワ、リオネル・ジョスパン両内閣で入閣する。1999年、教育相だったロワイヤルは、高校での避妊薬の無料配布に踏み切った。この措置は保守派から、高校生のセックスを奨励するものであるとの批判を浴びた。
2004年には55%の得票率でポワトゥー=シャラント地域圏知事になった。これらの実績をもとにして、今回社会党から大統領選に立候補した。正式に結婚はしていないが、彼女の事実上の夫は、社会党第一書記のフランソワ・オランドで、二人の間には4人の子供がいるという。
彼女の政治的立場は弱者にあつい高福祉社会をこれからも堅持しようという立場である。そのために最低賃金の増額を大統領選の公約に掲げている。これに対して、与党候補のニコラ・サルコジはハンガリー系の移民の子孫で、エリートの保証ともいえる国立行政院(ENA)も出ていない。しかし、頭がよく舌鋒は鋭い。行動力もある。
シラク大統領は彼を内務・治安・地方分権相に据えた。警察の最高責任者として、彼は辣腕を振るい、犯罪率を下げた。交通事故なども劇的に減った。ついで、経済・財務・産業相になった彼は、ここでもサルコジは辣腕を振るい、「フランス人よ、もっと働け」と言い出した。
サルコジは欧州型の高福祉政策は国家から競争力を奪うという。終身雇用や高い最低賃金、長期休養制度と短い労働時間など、労移動者に優しい福祉政策は、彼らから勤労意識を奪い、フランスを怠惰な人々の住む国にしてしまった。この結果、企業は国際競争力を失い、国民は高い失業率に苦しんでいるのだという。
欧州型の福祉社会を堅持したいという左派のロワイヤルは下積みの労働者や若者に人気がある。一方、アメリカ型の自由競争主義を導入して、企業を育て、国の経済を活性化したいという右派のサルコジの主張は、資本家や企業経営者など社会の上層部を中心に受け入れられ、経済界の圧倒的な支持をあつめている。
5月6日に行われる決選投票では、サルコジ候補が若干有利ではないかという。フランス国民の選択はヨーロッパの未来を変え、世界の未来を変えることになるだろう。来るべき社会の理想像として、アメリカ型の弱肉強食的な競争社会ではなく、欧米型の人々に優しい高福祉共生社会を支持している私としては、ロワイヤル候補の健闘を期待したいところだ。
(今日の一首)
左派と右派激しく争うフランスは 政治を学ぶ生きた教科書
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