橋本裕の日記
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数学の本を読むと、数には二種類のものがあると書いてある。ひとつは、1番目、2番目、3番目という具合に、番号や順序を表すために使われる数で、「序数(順序数)」と呼ばれる。
もう一つは、犬が3匹いるとか、猫が5匹いるとかいうふうに、集合の個数をあらわすもので、「基数(集合数)」とよばれる。この二つの数は本来は別物である。その証拠に、英語では別々の呼び方がされている。
(1)序数 first、second、third、 …… (2)基数 one、two、three、……
序数(順序数)はその個体の全体の中のでの位置をあらわすものである。私が病院に行って、10番という番号札をもらえば,それは私が10番目に診察を受けることを意味している。だから、序数はその個体に所属している。
これに対して、私のクラスは生徒が23名いるという場合は、この23という数字はクラスの人数を表しているわけで、クラスの構成員である一人の生徒に所属しているわけではない。基数はその集まり全体の要素の個数を表しており、集合に所属している。
しかし、この二つの数はまったく別物かといえば、そうもいえない。たとえば、ここに3匹の犬がいるとき、私たちは「1,2,3」と順番に指を折り曲げて、最後に残ったのが「3番目」であることを確認する。そして、同時に、犬が全体で3匹いることを確認するわけだ。だからここでは「最後の序数=基数」という関係が成り立っている。
子どもがお風呂で「1,2,3、…100」と数えるとき、これは「序数」を唱えているわけだ。しかし、子どもが40まで数えたとき、もし教育的な父親が、「さて、いままでのところで、いくつ数を数えたの?」と訊けば、子どもは自分が今口にした同じ数が、これまでに数え終えた数の総数であることに気づく。100まで数え終わった子どもは、自分が数えた数の総数が100であることを知り、「100まで数える」ということは「100個数える」ということだと理解する。
こうして子どもは、序数を手がかりにして、ここから基数を手に入れる。英語圏の子どもであれば、「third」まで数えれば、そのものの集まりの数(基数)は、「three」であると理解するわけだ。たとえば、「21世紀」は英語では「21th」と序数であらわす。「21歳」は「21old」で基数であらわす。だから、序数か基数かという区別はいつもついてまわる。
中国や日本の子どもはこの面倒な読み替えはしなくてよい。序数も基数の区別があいまいだからだ。しかし、このことが「数」についての理解もあいまいにしているところがある。このことを踏まえた上で、「数とは何か」という問題に、明日の日記でもう少し迫ってみよう。
(今日の一首)
何気なく使う言葉もはるかなる 太古の恵みいとほしきかな
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