橋本裕の日記
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2007年03月13日(火) 愚かなイラク戦争

 イラクで戦死した米兵はすでに3350名を上回った。国連の発表では5万人以上の人々がイラク戦争で命を落としている。しかも、これだけの犠牲を出しても、いまだにイラクは内戦状態である。今後どれだけ犠牲者が増え続けるのか、社会に不安が蔓延しているようだ。

 03年6月にイラク復興人道支援室の初代室長となったガーナ陸軍中将は、さっそく当時のラズムフェルド国防大臣に「われわれは3つの悲劇的な過ちを犯した」と苦言を呈したという。(「週刊現代」3/12号)

(1) イラン軍を解体したこと。これによって、何十万という武装イラク人を生み出してしまった。

(2) バース党員を政権から排除したこと。これによって3万人以上の有能なバース党員が地下にもぐり、反政府勢力として活動するようになった。

(3) 治安の担い手であった警察官や実務を担当してきた公務員を切り捨てたこと。これによって、治安が乱れ、市民生活の秩序が破壊された。

 イラク復興の責任者となったガーナ中将は「こうした点を早急に改めるべきだ」とラズムフェルドに進言したという。しかし、ラズムフェルドの答えは、「あともどりすることはできない」というものだった。こうしてアメリカは占領政策を見直す惜しいチャンスを逃した。

 この点、第二次大戦後のアメリカの日本占領政策と対照的である。このとき、トルーマン大統領はマッカーサーの進言をいれて、最高指導者の天皇の戦争責任をあいまいにし、日本の保守的な指導者の大半を温存した。警察官や公務員はそのまま業務を続行し、社会に混乱は生まれなかった。

 しかし、ガーナ中将はマッカーサーにはなれなかった。彼の前にラズムフェルドという巨魁がたちふさがったからだ。昨年、共和党は中間選挙で大敗し、ラズムフェルドは失脚したが、ブッシュはすぐに米軍兵士2万人の増派を打ち出すなど、ラズムフェルド路線をあらためようとはしない。

 「イラクを民主化する」という大儀の旗の下に行われた戦争が、「石油の利権」をめぐる争いでしかなかったことは世界の常識になりつつある。そして、実際にイラク戦争はブッシュ一家やラズムフェルドが会長を務めていた軍需産業に巨大な利益をもたらし、アメリカ経済をよみがえらせた。

 その意味で、この戦争は彼らにとって大成功だったのだろう。しかし、その陰で、多くのアメリカ人とイラク人の命が失われ、現在も悲劇は進行している。この愚かしい現実をもたらしたものが何であるか、私たちはその正体を知らねばならない。

(今日の一首)

 争いを好むものありおろかなる
 人々ありてこれにむらがる


橋本裕 |MAILHomePage

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