橋本裕の日記
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一昨日、福井へ帰省したとき、「乾(いぬい)公園」によってそこのベンチで一服した。実家の近くの公園で、子ども時代によく遊んだ思い出の場所である。自伝「幼年時代」や「少年時代」の舞台にもなっている。私の二人の娘たちが幼い頃は、福井に帰省する度に、ここに連れてきていた。
一昨年の7月に、ある女性が「少年時代」を読んだ感想を、当時健在だった「橋本裕掲示板」に書き込んでくれた。それは次のような文章である。あわせて、私のお返しの文章も引用しよう。
ーーーーー 懐かしい公園 ーーーーーーー しるく (女性 会社員 46歳 A型 福井県) 2005/07/30 01:37 はじめまして。 ふとみつけた「少年時代」を読んで驚きました。「乾公園」の名があったからです。遠い記憶をたどると、多分、私は2歳から4歳くらいまでを、乾公園の前の2階建てのアパートで両親と共に暮らしていたはずなのです。そしておそらく昭和37年の暮れころに、今住んでいる近隣の町に引っ越したのだと思います。
私の人生の最初の思い出が、乾公園のブランコ、そして、公園で開かれたお祭りのわたがし…。ブランコに座った写真と、アパートの玄関で撮った写真がその記憶を裏付けるだけですが…。そこには、だっこちゃん人形と、隣の部屋のお友達と、そして今は亡き母の若い日の姿があります。
今、公園付近に行ってみても、勿論、そのアパートはありません。どんな名前のアパートだったのかさえ覚えていません。ただ、自分というものの人生の始まりを思うとき、いつも「乾公園」の名がよみがえってくるのです。私の小さな自我の芽生えを乗せてゆれていた公園のブランコは、多分橋本さんの「少年時代」のあのブランコなのでしょう。それはまた、別の人たちの大切な大切な思い出を沢山載せて、今もどこかでゆれ続けているのでしょうね。
ーーーーーー Re:懐かしい公園 ーーーーーーーー 橋本裕 2005/07/30 04:58
しるくさん、投稿ありがとうございます。「少年時代」を読んで下さって、ありがとうございます。
4歳のころまで「乾公園」(いぬいこうえん)の近くに住んで見えたそうでうね。その頃、私は中学生でしたから、ひよっとしたら公園でお会いしていたかも知れませんね。
私はその頃よくブランコに坐って夜空を眺めていましたよ。SF小説に夢中の頃でした。そのブランコにしるくさんも今はないお母さまと遊んでいらしたわけですね。
<私の小さな自我の芽生えを乗せてゆれていた公園のブランコは、多分橋本さんの「少年時代」のあのブランコなのでしょう。それはまた、別の人たちの大切な大切な思い出を沢山載せて、今もどこかでゆれ続けているのでしょうね。>
小さな公園ですが、思い出のいっぱいつまった公園です。今も福井に行くと、必ず訪れます。そして懐かしい追想にふけります。思い出は人生の財産です。多くのひとびとが、この公園に同じ思いをよせているのかと思うと、心が温められます。
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しるくさんや私が幼いときに乗ったブランコはもちろんもう跡形もない。いまそこは木製のベンチがひっそりと置いてある。一昨日、私はそこに腰を下ろして、花粉防御マスクの下で水洟をすすり、かゆい目をこすりながら、在りし日のなつかしい追憶の夢に浸った。一緒にブランコに乗った幼馴染の少女は、今どうしているのだろう。
(今日の一首)
ふるさとの小さなブランコ夢の中 お下げ少女の面影ゆれる
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