橋本裕の日記
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今年は「一日一首」ということで、日記に毎日短歌を連載している。日記を書いた後、10分ほど考えて、一首だけ作る。はやいもので、もう1ヶ月がたち、30首ができた。これをここでまとめておこう。
除夜の鐘耳を澄ませばかすかなる妻に聴こえて我にもとどく
なにゆえにお神酒はうまししみじみとありがたきかないのちあること
てのひらのピーナツくわえたヤマガラはわれをみつめてかわいげに鳴く
凧あげてパン屑やりしユリカモメ庄内川もさびしくなりぬ
めでたしや病の癒えた母の声よろこび満ちて受話器に響く
雨音にやさしきこころ誘われてほのぼの思ふ母のことなど
庭の木をゆする風さえなつかしく思いいでたり佳き人のこと
うっすらと雪をまといし息吹山われを迎えて白くかがやく
あたたかきふとんのなかであれこれと思うひととき寒き日もよし
正月にたらふく食べた同僚がわれをうらやむわれは微笑む
ゆるやかに日が長くなるありがたさ寒き中にもしのびよる春
びわの木で小鳥さえずり餌を食う小枝の先にはミカンやリンゴ
真夜中に目を覚まして考える今もイラクで流血の悲鳴
さびしさを求めて街をさすらひし若き日もあり詩人のように
遠くより訪れしものあり夜もふけて文を読みつつ在りし日思ふ
田の道を老女ほほえみ腰まげて手押し車でやってくる
雨降れば散歩道なる喫茶店われにささやくしばし憩えと
うすあかり障子にさして一日のはじまるときは喜びあふる
太陽のごとく輝きあたたかしハロゲンランプ寒き夜もよし
うす明かり心にさしたり書を読みて我に等しき友を見るとき
いつまでもふるきパソコン捨てられずかたわらにあり愛撫してみる
カラスばか増えて困ると妻がいう自然に近き生き物絶えて
河原にてとんびを待てり妻とわれ手持ち無沙汰に小石をひろう
うつくしき母国語ありて世の中もわが人生も幸あふれたり
人に会い別れて仰ぐ冬の空流れているよ白い雲たち
定年後夢見ることはあまたあり健やかなればたのしみ多し
たのしみはふとたちどまり山を見てヘッセの詩など思い出すとき
なんとなく心うき日は川に来て小石を拾い投げてみるかな
あたたかき心と心ふえあえばかなしきこの世もほほえみあふる
人生はたのしむものなり青空を歩いてみよう風に吹かれて
(今日の一首)
ふるさとを思へばたのし足羽川 母と歩きし桜並木も
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