橋本裕の日記
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2007年01月15日(月) 日本語の構造(3)

 これまでの2回の議論をまとめておこう。文の成分をA,B,C、・・であらわすと、英文の場合は、先頭にS(主語)がきて、次のようになる。

 S A B C D E F

 英文の場合はこの語順には規則があり、自由に交換ができない。日本文の場合は最後にくるV(述語)のほかは、比較的自由に位置を交換することができる。

 A B C D E F V

 B A D F E C V

など、いろいろなバリエーションができる。これをまとめて次のように表す。

   A B C D E F 
  −−−−−−−−−−
         V

 つまり、日本文の姿を、述語を下部構造にもち、その上に補語群が並立する二階建と考えるわけだ。このモデルが日本語の実情を反映しているならば、私たちが日本語を学んだり、外国人に教えるのに役立つに違いない。とりあえずこのモデルによって、日本文のいくつかの基本文型について見てみよう。

1.<名詞文:〜です>

  (私)は
 ーーーーーー
  (教師)です

2.<形容詞文:〜しい>

  (花)が 
 ーーーーーー
  (美)しい

3.<形容動詞文:〜です>

   (風)が 
 ーーーーーーーー
  (さわやか)です

4.<存在文1:〜あります>

(机の上)に  (本)が 
 ーーーーーーーーー
     あります

(机の上)に  (新聞)が (畳ん)で
 ーーーーーーーーーーーーーーー
        あります

 ここで( )の中にいろいろな単語が入る。「ある」という動詞をテーブルに見立て、「に」と「が」という格助詞のお皿がいつも置かれていると考える。そのお皿の上に、名詞を入れるわけだ。皿はからっぽのままでもよい。

 つまり、「ある」という動詞が与えられたときは、テーブルの上に場所をあらわす「に」と、「主格」をあらわす「が」や「は」を補語の受け皿として置かなければならない。これは「ある」という動詞の「下から上への」圧力である。

 逆に、「机の上に本が」という上部構造が決まると、そこから下に圧力がかかる。そして「あります」という動詞が誘導される。このようにして上下の圧力(吸引力)によって文が統一される。日本文を「主語」中心というのが間違いであるのと同様に、単に「述語中心」とばかり強調しすぎるのもまちがいである。補語群によって動詞が誘導される働きは軽視できない。

5.<存在文2:〜います>

 (裏庭)に (犬)が 
 ーーーーーーーーー
     います

(裏庭)に (犬)が (寝転ん)で
 ーーーーーーーーーーーーーー
        います

「ある」は「生る」が原義だが、現代語では「存在する」といういう意味で使われる。「窓がある」「存在意義がある」など、おもに無生物や抽象的な存在について使われる。「いる」は「座る」が原義で、「そこにじっと逗留している」という意味がある。「イヌがいる」「人がいる」など、おもに生物や人間の存在について使われる。

6.<自動詞文:〜します、しています>

  (私)が (川)に
 ーーーーーーーーーー
     行きます

  方向・場所をあらわす<に>は<へ>で置き換わる。ただし、<川に行く>というのは、英語の<go to>で、確実に川に到達するという意味である。<川へ行く>の場合は、英語の<go for>の場合に近く、方向性のみを表している。<彼は川にいる>とは言うが、<彼は川へいる>とは言えない。

7.<他動詞文1:〜をします>

  (私)が  (あなた)を
 ーーーーーーーーーーーー
      愛します

8.<他動詞文2:〜に〜をします>

 (日曜日)に (喫茶店)で (私)が  (あなた)に (友人)を  
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
             紹介します

(日曜日)に (喫茶店)で (私)が  (あなた)を (友人)に  
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
             紹介します

 「あなたに紹介する」と「あなたを紹介する」の違いは微妙なので、また別に考察しよう。このほか、受動態や使役形など、さまざまな文型が考えられる。

(今日の一首)

 遠くより訪れしものあり夜もふけて
 文を読みつつ在りし日思ふ


橋本裕 |MAILHomePage

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