橋本裕の日記
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2006年12月21日(木) 財政赤字からの自由

 19日に発表された来年度予算財務省案をみると、一般会計は82兆9088億円である。税収が前年度より7兆5900億円ふえて、53兆4700億円になっている。税収が増えたのは法人税の増収と所得税増税(定率減税の控除廃止1兆1千億円)によるものらしい。

 この結果、03年度には19兆8千億円もあった赤字幅が4兆4千億円に減少した。来年度は新規国債の発行も4兆5千億円減らして、25兆4千億円あまりですみそうだという。

 もっとも増収で赤字幅が減少してといっても、まだまだ借金財政は続くわけだ。支出を見ると、一般歳出が46兆9783億円なのに対して、国債費に20兆9988億円もあてている。それでも07年度末の国債残高は10兆円増えて547兆円になる。国と地方をあわせた長期債務残高も6兆円あまり増えて、773兆円ほどになるという。

 7年ほど前、このHPを始めた頃、私は何度も借金をなくせ、そのために法人税を上げよ、所得税の累進課税率や相続税率をもとにもどせと熱心に主張してきた。この主張は基本的にはかわらない。その理由を簡単にもう一度繰り返そう。

 政府は国債を発行して、社会的インフラを整えた。それ自身は悪いことではない。なぜならこれによって日本経済は奇跡的に発展し、個人金融資産が何と1500兆円にもなった。つまり、簡単に言えば770兆円を投資して、1500兆円稼いだのである。しかもこの他に、国や企業が保有する莫大な金融資産がある。

 しかも国債によってつくられた社会インフラは今後も使用可能である。無駄な施設も山ほどあるが、多くのものは有益で、これらは次世代にも受け継がれ、これからも多くの便益と富を生み出すだろう。つまり、773兆円の投資はいろいろな国民的共有財産を生みだしてきたし、これからも役に立つものである。

 ところで、こうした社会サービスに対して、国民はその対価を払わねばならない。それが「税金」である。受益者負担の原則によれば、これによって多くを稼いで恩恵を受けている企業や個人がこれを負担すべきだろう。とくに個人金融資産をしこたまためこんでいる人たちからはこれを国庫に還元してもらうべきである。

 もっとも、法人税の値上げや、所得税の値上げについて、私がいくら主張したところで、そう簡単に実現はしない。この国は民主国家だといいながら、実権を握っているのは経団連を代表とする財界であり、財界をパトロンとするメディアや、二世、三世の世襲政治家である。

 そこで、私は最近はもうすこし違ったアプローチで借金財政を解消する方法を推奨することにした。それが「国債の日銀引き受け」である。つまり国の借金をすべて日銀に肩代わりをしてもらうわけだ。

 07年度でいえば、政府は25兆円あまりの新規国債を発行する予定だが、そのうち20兆円分は発行済み国債の償却費である。もし、国債を日銀に引き取らせれば、この20兆円が浮くわけで、赤字は5兆円である。この赤字はおそらく数年後には解消するだろう。

 そのかわり、日銀は毎年20兆円ほど「日銀券」を増刷することになる。これは1500兆円という個人金融資産からすれば大した金額とはいえない。国債の日銀引き受けでハイパーインフレの発生を懸念する人がいるが、これは800兆円ものお金が一気に市場に出ていくと考え違いをしているからである。

「橋本推奨方式」の利点はこれが財政赤字の解消になるだけではない。これによって法人税や所得税の値上げを回避することができる。しかもマネーサプライが多少増えることで、消費が伸びて経済は活性化する。

 これは企業活動にとっても、個人の家計にとっても朗報であろう。この方法は富裕層にとっても、貧困層にとっても悪いものではない。つまり、だれも痛みを伴わず、損をしないというありがたい方式である。


橋本裕 |MAILHomePage

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