橋本裕の日記
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| 2006年12月12日(火) |
雇用格差が生み出す貧困 |
政府の統計によると、2005年度の正規労働者(正社員)の数は3374万人で、この十年間で、400万人も減っている。その一方で、非正規労働者(フリーター、パート、派遣)が630万人増えて、1633万人になった。
非正規労働者の場合、時給は正規労働者の6〜7割である。しかも、雇用が不安定で、総労働時間数も少なく押さえられるので、収入そのものが少ない。いくら働いても生活保護レベルさえ確保がむつかしい人たちがいて、ワーキング・プーアと呼ばれている。
しかも非正規労働者の多くは厚生年金、雇用保険、医療保険といった社会保険制度に加入していない。たとえば厚生年金に加入するには週の労働時間がフルタイマーの3/4以上である必要がある。失業保険も1/2(20時間)以上働いていなければならない。
それではなぜ、日本で非正規労働者が急増しているのだろうか。ひととき「労働の多様化」などという口当たりのいい言葉が流行し、フリーターを礼賛する風潮があったが、さすが今はそうした論調は影をひそめた。
調査によると、非正規労働者の大半は正規労働者となることを望んでいる。たとえば男子の場合、フリーターの80パーセント以上が正規雇用を求めている。しかし、現実は厳しい。そこに雇用の壁がそびえているからだ。
雇用主は労働コストを安くしようとする。臨時採用であれば賃金も安い上に、解雇も簡単である。社会保険料(1/2負担)も払いたくない。だから、経営者にはつねにリストラで正規雇用を減らし、これをコストの安い非正規社員に置き換えようという誘惑から逃れられない。
そしてこの10年間に労働規制がつぎつぎと解除された。その結果、「業績回復」や「合理化」の名目でリストラの嵐がふきあれ、非正規労働者が激増したわけだ。しかもこの傾向が今後も続きそうである。
こうして国民の間に所得格差が急速に広がった。フリーターの平均年収は140万円である。生涯賃金でみると、正規労働者と非正規労働者の間には2倍もの格差がある。今後この階層が増大することで、ますます日本の貧困率が上昇することが考えられる。
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