橋本裕の日記
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2006年10月24日(火) 企業と個人の国際化

 トヨタといえば、日本を代表する会社である。しかし、この会社は現在世界中に工場を持ち、世界中で製品を売りさばいている。たしかに本社は愛知県の豊田市にあるが、従業員の大半は日本人でないこの会社を単純に日本の企業ということはできない。正確には「多国籍企業」というべきだろう。

 同様なことは現代のほとんどの大企業に言える。たとえばアメリカを代表するIT企業のHP(ヒューレット・パッカード)は、170ケ国で15万人以上の従業員を採用している。たしかに本社はカルフォルニア州のパロ・アルトにあるが、従業員の大半はアメリカ人ではない。HPはアメリカのみならずEUでも最大のIT企業であり、ロシアでも中東でもそうである。

 企業が多国籍化したあと、個人のグローバル化が促進された。国際教育研究所によれば、2004年から2005年にかけて、アメリカの大学に留学したインド人留学生は8万466人で世界一だった。ついで、中国人学生が6万2523人、韓国人留学生が5万3358人と続く。

 インド経済が躍進を続けているが、その出発点は初代首相のシャフハート・ネールが創設したインド工業大学(IIT)だと言われている。この50年間にここから何十万人もの有能な人材が育ち、そのおよそ1/3がアメリカの大学に学び、さらには数万人が移住したという。彼等の活躍がアメリカのIT産業を育てる上で大きな力になった。

 同様の動きは中国でも起こっている。胡錦濤首席はじめ現在の7人中央政治局常任委員の4人が、北京の精華大学で数学や工学をまなんでいる。この中国を代表する理工系大学からも多くの優秀な人材が育った。

 北京のアメリカ大使館領事部の窓口には、アメリカの大学に留学を希望する学生が行列を作っている。そしてアメリカ留学のチャットルームでは、いかにアメリカ留学を勝ち取るか、大使館での面接の情報などがやりとりされているという。

 ハーバード大学に合格させた親が、「ハーバードの女学生イーティン・リウ」という本を出版したら、2003年までに300万部を売り払うベストセラーになったという。

 中国やインドでは毎年何十万、何百万もの優秀な人材が競って理系大学で学び、アメリカに留学して能力を磨こうとしている。こうした人材がこれからのIT社会をリードしていくことになるのだろう。フリードマンの「フラット化する世界」を読んでいると、その熱い息づかいを間近に感じるようだ。


橋本裕 |MAILHomePage

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