橋本裕の日記
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2006年10月17日(火) 金融業界は天下り天国

 10月15日の朝日新聞の一面トップは「消費者金融天下り23人」だった。大手5社にこれまで旧大蔵省、財務省の官僚23が天下りしていたのだという。

 例えば武富士の場合は9人を受け入れた。そのうち大蔵省官房審議官などを歴任した秋吉良雄など3人は社長、副会長、副社長の各ポストについている。

 プロミスには6人が天下りし、うち2人が会長、1人が副会長に就任した。その他、アコムには4人、アイフルには3人、三洋信販に1人天下りし、会長職についたりしている。

 消費者金融の関係者は、「監督官庁の天下りを受け入れることでパイプをつなぎ、銀行から安定的に融資を引き出せた」と話しているという。また、大蔵省から天下ったOBは、「何かあったときにちゃんと役所を説得してくれと頼まれた」と証言している。

 須田慎一郎さんの「下流喰い」(ちくま書房)によると、武富士の場合、05年3月期、約1兆6000億円の無担保ローンを貸し出し、その利息収入は3475億円もあった。ところが資金の調達コストは231億円だった。ざっと15倍のまる儲けなわけだ。

 こういうぼろい商売が放置されたおかげで、日本の資産家の上位者にサラ金業界のトップが雁首をそろえることになった。そしてその分、350万人もの多重債務者を日本社会はかかえることになった。その共犯者が旧大蔵省と財務省だった。

 サラ金業界に資金を融資した銀行も共犯者だが、ここにも大量の官僚が天下っている。帝国データーバンクの調査によると、2004年度の全国121の銀行の役員1641人のうち、103人が旧大蔵省や日本銀行などからの天下りである。そして、天下り役員の約3割は代表権をもつ重要ポストについている。

 そしてこの業界もじつは大儲けしている。おりしも同じ日の朝日新聞に、「大手行、法人税を納めぬ怪」と題して書かれている。この記事によると、6大金融グループは06年3月期決算で3兆円という過去最高の当期利益をあげたが、法人税は1円も納めなくてよいのだという。

 どうしてこんなことになったかというと、04年の税制改革で当期黒字を過去の赤字で埋め合わせできる期間が7年に延長されたからだ。これは不良債権処理をスムーズに行わせるためだというが、常に家計の赤字に苦しみながら、それでも律儀に税金を納め続けているわれら庶民の立場としては、どうしても割り切れない思いが残る。

 銀行が空前の利益を上げたのも、0.02パーセントというただ同然の普通預金の金利で国民から資金を調達し、これを消費者金融にまわしたり、自らもキャッシングで消費者金融方式に相乗りし、普通預金の1000倍を超す貸出金利で荒稼ぎした結果である。そのうえ税金もびた一文納めないというのだから、盗人猛々しいと言われても仕方がない。


橋本裕 |MAILHomePage

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