橋本裕の日記
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2006年10月11日(水) 韓国と中国の英語熱

 セブで韓国の若者と話をしたが、彼等は韓国で有名な企業に就職するためには、英語は不可欠だと言っていた。どちらかというと、個人的な趣味で英語を学んでいる日本人の若者と、この点、対照的だった。韓国と日本の両方で英語を教えた経験をもつドワイトさんは、日本と韓国での英語教育の違いについてこう述べている。

<日本では、僕はただのアシスタントだということです。韓国では、完全に教室をまかされていました。授業は英語で進められ、生徒は僕に英語で話しかけてきましたし、僕も韓国語はほとんど使わず、英語で話しかけました。ときどき、ほんの少しの韓国語を使うこともありましたが、大抵は英語だけを使ってきました。レッスンプランも資料も全部ひとりで用意しなければなりませんでした。

 ここ日本では、生徒の発音を直す程度で、本当の意味で「教える」ということはしていないような気がします。文法事項にそった問題を出して生徒に答えさせたり、僕が言ったことをリピートさせたりするだけです。

 もうひとつ、韓国と日本の大きな英語教育の違いは、授業中に使う英語の量です。韓国では、英語を英語で教えています。授業中、95% が英語です。しかし、日本の場合、英語を教えるのに日本語を使っています。韓国とは全く反対で、95%が日本語なのではないでしょうか。

 韓国では、システムもちょっと違いました。45分授業で、ひとクラスの人数も、もっと少なかったので、生徒ひとりひとりと向き合う時間が持てました。10人から15人くらいです。10人以下のときもありました。

 教師は僕ひとりです。45分間、準備してきた資料を使い教えました。パートナーとしての韓国人英語教師はいました。僕が45分授業をしたあと、韓国人の英語の先生が入ってきて、さらに45分間教えます。このときは、韓国語を使い、文法にのっとった授業をします。僕の授業はあくまでも、それまでに習った英語を話すこと、使うことに焦点を当てていました。

 この方式はとてもよかったと思います。僕が授業中、生徒たちにうまく伝えられなかった部分は、この韓国人英語教師がフォローし、説明してくれました。

 日本での問題点のひとつとして、こんなことがあげられます。日本人の英語教師とネイティブ教師が同時に授業を進める場合、生徒たちは、ネイティブ教師の声を聞こうとしません。つまり、日本人の先生が訳してくれるのを待ってしまう傾向にあるということです。

 僕は、ここにいて何の役にたつのだろう、僕なんかいなくたっていいのではないかという気持ちになってしまいます。英語を全部日本語に訳してしまうのなら、どうして僕が必要なのでしょう?生徒たちは、僕が言うことを理解しようとする努力さえ怠ってしまいます。だって、少し待てば、どうせ日本語の訳が聞けるのですから。

 脳をフル回転させるのをやめてしまいます。本来は、日本語訳は与えられるものではなく、生徒自身が自分の力で、僕が言った英語をわかろうと努力すべきなんじゃないかな>

<韓国では、多くの社会人も教えてきましたが、彼らは、履歴書の見栄えをよくし、良い仕事を得るために英語を学んでいましたね。彼らの目標は、英語を流暢に話すというよりも、あくまでも試験でいい成績を取ることでした。

 そこへいくと日本では、多くの人が英語を実際に使うために習っています。海外旅行に行くためであったり、英語圏の友達を作るためであったり、あるいは職場で実際に英語を使わなければいけない立場にいたり、学習意欲の動機となっているのは、もっと自然なところから沸き起こっているように思います。英語に対して興味をもち、態度も前向きです>

http://allabout.co.jp/study/english/closeup/
CU20040807A/index.htm

 これを読めば、日本の英語教育の問題点がはっきする。つまり、英語の授業でありながら、そこで使われているのはほとんど日本語ばかりで、生徒が英語を口にする機会もほとんどない。これで英語が身に着くわけはないわけだ。韓国、中国で児童英語講師の指導にあたっているアリーダ・クラウス (Aleda Krause) さんもこう述べている。

<韓国や中国の英語熱は、もっとすさまじいものがあります。韓国では国の力の入れ方が違います。1997年から小学校3年生 (8歳) を対象に英語が必修科目として導入され、週2時間勉強しています。おもに会話を中心に授業が進められ、英語だけの指導が行われています。

 中国でも上海・北京などの大都市では公立小学校での英語教育が導入され始め、中国人の英語教師が英語だけで授業をすすめています。中国では、英語ができると高収入につながるので、これが国民の良い刺激になっているようです。以前は、日本語やロシア語が人気があったんだけれど、最近ではインターネットの普及で英語の使用頻度が増え、「英語をものにする」=「良い仕事に就ける近道」=「高収入」という図式ができているようです。

 どちらの国も従来の文法重視の英語教育をやめ、会話を中心に、実社会で実際に使える英語を身につけることを目標にしています。日本と違うのは、英語の授業は英語だけで進めているところでしょうか>

http://allabout.co.jp/study/english/closeup/
CU20050127A/

 実際のところ、日本でも早期英語教育をぜひ実施したいというのは、こうした韓国や中国の英語熱に刺激され、このままでは国際競争力をうしなうのではないかと焦りを感じた日本企業や経済界の強い意向のようだ。しかし、英語の早期学習よりも、現在行われている中学、高校の英語教育の現状を変えていくことが必要ではないだろうか。


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