橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2006年09月21日(木) 命が担保の消費者金融(2)

 昨日の朝日新聞朝刊第一面のトップの見出しは<「借り手に保険」廃止検討>だった。<「命を担保」批判強く>との副題がついている。記事の一部を紹介しよう。

<消費者金融大手アイフル、プロミス、三洋信販の3社は19日、借り手の死亡時に備え生命保険をかける制度について、廃止も含め検討していることを明らかにした。制度をめぐって「命を担保にしている」との批判がたかまり、保険の引き受け手である生保業界が加入手続きの厳格化を求める方針を表明。消費者金融側にとっては事務コスト増が見込まれることもあり、見直しに動き始めた>

<加入への同意書が借金の申込書と一体となり、知らぬ間に命を担保にされている実情に批判が高まった。厳しい取り立てや借金苦による自殺を助長しているとの指摘も出ている。3社の他、アコムも「現時点ではやめることは検討していないが、今後はありうる」としている>

<生保協会によると、消費者団体生保は生保19社が、消費者金融を主体に27社向けに取り扱っている。3月末時点の被保険者数はのべ2200万人で、保有契約高は8兆4千億円>

<05年からはじまった上限金利見直しをめぐっては、今月に入って自民党内で議論が紛糾。同党は15日に改正案の骨子をまとめたが、利息制限法の上限(15〜20%)を上回る金利が公布後も約5年間続く「経過措置」をつけた。日弁連や消費者団体、一部国会議員らは経過措置の設定に反対していた>

 いずれにせよ、20年近く前から始まったという「命が担保の借金」が、ここにきてようやく見直されようとしている。こうした非人間的な制度が廃止されることは是非必要なことだ。さらに現在30パーセント近い高金利も5年後を目途に、20パーセント近くに引き下げられることになりそうだ。

 もちろんこれで消費者金融の問題がすべて解決するわけではない。貸し出し金利を法律で下げることに反対する人の中からは、これによって庶民がさらにあくどいヤミ金融の餌食になるのではないかという不安を指摘する声も上がっている。人々が高利のサラ金にすがりつき、ついには350万人もの多重債務者を生みだす社会の土壌そのものが変わらないかぎり、たしかにこの問題は解決しない。

 2002年の日本の貧困率は年収238万円以下の所帯が15.3%だったが、2005年には年収200万円以下が20%を超えた。OECDの貧困率の調査を現時点で行えば、メキシコを超えて世界一になっているかもしれないという。こうした変化を歓迎する人もいるだろうが、それはほんの一部の人たちである。

 昨日、阿倍官房長官が他の2候補に大差をつけて自民党の総裁に選ばれた。日本はもともと貧富の差がもっとも少なく、世界からうらやまれていた国である。それが小泉政権の5年間で、貧富の差がどんどん拡大し、日本社会は世界でもっとも大きい「格差社会」になった。どうじに自己破産者が劇的に増え、自殺率や犯罪率も上がった。

 阿倍さんは小泉政権の「改革路線」を継承するだけではなく、その改革がもたらした「闇の部分」をぜひ自覚して欲しい。消費者金融の問題は、日本社会の実相を知る上で、絶好の手がかりになるだろう。


橋本裕 |MAILHomePage

My追加