橋本裕の日記
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| 2006年08月31日(木) |
暴力による言論封殺を許すな |
8月15日の夕方、山形県鶴岡市にある加藤紘一自民党元幹事長(67)の実家と事務所が、右翼団体の幹部によって襲われ全焼したが、小泉首相はようやく28日になって、「暴力で言論を封じるのは決して許されることではない」と発言した。
安部官房長官も28日の記者会見で、「仮に加藤議員の言論を弾圧し、あるいは影響を与えるような行為であるとすれば許されない」と語った。事件が起こってから、すでに13日が過ぎている。言論の自由は民主主義の根幹である。これを暴力で否定する行為について、たとえ「捜査中」でも、もう少し迅速に対応してもよいのではないか。
30日の朝日新聞朝刊によると、この点について記者から質問された首相は次のように答えたようだ。
「私はいつも聞かれたことに答えている。この問題も、(28日まで)聞かれなかったから答えなかった」
この小泉首相の距離を置いた発言にがっかりした。首相の政治家としての資質について、ますます疑問を持たざるをえない。朝日新聞も、「首相の対応に象徴的なように、真っ先に警鐘をならすべき政界が危機感を募らせているとは言い難い」と書いている。
そうしたなかで、この事件に積極的にコメントした政治家も少ないながらいないわけではない。火中の加藤氏はじめ、何人かのコメントを、朝日新聞から拾っておこう。
「私や母、支持者が受けた被害は大きいが、発言を変えたら被害はもっと大きくなる。国のために思うことは今まで通り発言しなければならない」(加藤紘一自民党元幹事長)
「暴力による言論封殺を意図したのなら言語道断」(谷垣財務省)
「国際的なテロに毅然としなければならない、という日本は、国内のテロにも毅然としてほしいと願っている」(河野洋平衆院議長)
「郵政民営化に反対するのは悪いやつだ。靖国神社(参拝)で何が悪いんだという手法や考え方が、日本の社会に危険な結果をもたらす」(小沢民主党代表)
しかしながら、多くの政治家はだんまりを決め込んでいる。メディアや言論人の動きも控えめだ。田原総一郎さんによると、「朝まで生テレビ」でも、小泉前首相の靖国参拝反対の論客が、ここにきて急に出場を辞退するようになり、スタッフが困っているという。田原さんは、週刊現代9/9号の記事の中で、こう答えている。
「それはメディアが自分たちに被害がおよぶことを恐れているからです。いってみれば自己保身ですよ。加藤氏の実家放火事件を報じた新聞を見ても、とても臆病で脅えた書き方になっているのがわかります」
メディアの世界に通じている田原らしい発言である。田原さん自身、自己保身と自己宣伝の名人だと思うが、それは別にして、彼もこの事件に言論封殺の危機感を覚え、この言葉を残したのだろう。言論人として、是非、言論の自由擁護の毅然とした立場を貫いてほしい。
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