橋本裕の日記
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2006年08月27日(日) 自虐史観と自省史観

 一部に若者の右傾化は「自虐史観」せいだという論調がある。また戦勝国の戦争責任も問うべきだという声もある。私も戦争責任は原爆を投下した米国にも及ぶと考えるが、戦勝国側の戦争責任を追及するためには、まず自国の戦争責任をしっかり受け止める必要がある。

 Nさんが「戦争を語り継ごうブログ」で主張されているように、大切なのは「自省史観」である。そして、「自省」は決して「自虐」ではない。若者の右翼化の原因は「自虐史観」によるものではなく、むしろ戦争の悲惨さや、歴史についての無知によるものではないだろうか。

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 さて、昨日の日記の「右翼に阿るなかれ」を補足しておこう。朝日新聞社阪神支局襲撃事件(小尻記者殺害 もう1人は重傷 迷宮入り)は見落としてはいけない。この事件以来、マスコミの「自主規制」が強くなった。さらに、遡れば、1960年に日本愛国党員が引き起こした「嶋中事件」がある。

 これは深沢七郎が中央公論に発表した「風流夢譚」を不敬とみた日本愛国党員が、中央公論社長宅のお手伝いの女性をめった刺しにして殺害した事件で、日本の言論界はこれによって沈黙した。

 深沢七郎は右翼の迫害を逃れて、漂泊の旅に出たが、深沢の支持者だった三島由紀夫も深刻な精神的打撃を受け、これを契機に自ら右翼に転向した。(『三島由紀夫の生涯』安藤武著)

 脅迫されればだれしも身を引く。沈黙するのであればまだ良心的だが、中には保身のために「阿る」政治家や言論人がでてくる。軍部に阿り、自己保身を測った戦時中の日本のマスコミや政治家がいやでも脳裏に浮かぶ。

 5.15事件や2.26事件が起こったとき、青年将校も悪いが、襲われた政治家も悪いという言説がはびこった。言論を封殺する暴力については、とくに言論人は毅然とした態度で臨む必要がある。


橋本裕 |MAILHomePage

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