橋本裕の日記
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S先生の別荘は足助町から20分ほど山の中に入った、渓流沿いの静かな一軒家だった。夕方到着するとさっそく手分けしてカレーを作った。そのあと簡単なミーティングをして解散。私は9時頃、二階の一室のベッドに落ち着いた、S先生は何と庭にテントを張って、その中に寝るのだという。
何だか申し訳ないような気がしたが、「こちらの方が安眠できます」とのこと。その意味は夜になって分かった。生徒たちが興奮して眠らないのだ。時計を見ると、何と4時である。癇癪をおこした私は、最後まで居間で話していた2人に「即刻、床に就きなさい」と厳命した。たのしい合宿の雰囲気を壊したくないが、これでは寝不足になる。演劇の練習ができるわけがない。
ようやく静かになってやれやれと思ったら、今度は隣室からすごい鼾が聞こえてきた。たまらず私は外に出て、車の後部座席に体を縮めた。ようやく安眠の場所を得た。最初からここで眠ればよかった。
今日は7時に起床。8時頃から朝食。生徒たちが用意したのはホットケーキである。これに加えて、S先生が御飯と味噌汁、漬け物を用意してくださった。これがたいへんおいしかった。
9時から生徒7人と私で朝の散歩に出た。それから生徒たちは演劇の練習。私はS先生に椅子を借りて、庭の木洩れ日の中で読書をした。読んだのは広島原爆を描いた漫画「はだしのゲン」である。S先生の書棚に全9巻のうち5巻を除く8巻がそろっているのを見つけて、合宿中にこれを読破してやろうと決心した。読み始めたら夢中になった。
お昼はそーめんを食べた。それから3時過ぎにみんなで足助のマーケットにまで買い出しに出た。今夜はバーベキューである。女生徒5人は野菜の下ごしらえをし、S先生の指示にしたがって、男子生徒2人と私は炭火をおこす手伝いをした。炭はS先生が自ら窯で焼いたものだという。なかなか本格的なバーベキュー大会になった。
そのあと、全員で足助町にあるスーパー銭湯に行き、露天風呂でくつろいだ。9時過ぎに帰ってきて、花火大会。そのあと生徒7人と私は懐中電灯を持って山の中の道をあるいた。肝試しである。頭上に星が輝いていた。数が多すぎて、星座が読みとれないくらいだ。流れ星をいくつか見た。
別荘に帰ったあと、私は一人ベッドで「はだしのゲン」を読み耽った。生徒が「先生、トランプやろう」と言ってきたが、「今、読書中」と断った。集中していると、生徒たちがさわいでも気にならない。11時過ぎにこっそり家を抜け出して、車の後部座席へ行った。すぐに前後不覚の眠りに落ちた。
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