橋本裕の日記
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| 2006年08月17日(木) |
フィリピンの対日感情 |
セブでフイリピン人の先生二人(ジセール、ミミ)に、「第二次大戦で日本軍はフィリピンに侵略し、大勢の人をレイプしたり殺傷したりした。私の考えでは(In my opinipn)これは容易に許し難い非人道的なことであり、しかもその償いを日本はまだ充分していないと思うが、あなたはこのことをどう思うか(How do you feel about it)」と尋ねた。
ジセールもミミも判で押したように、「日本人は過去に悪いことをしたが、今はフィリピンにとって必要な友達だ。私も日本のことが好きです。多くのフィリピン人も同じ思いだと思います」と答えた。会食中の会話であり、そのときはこれ以上踏み込めなかった。
そこでジセールに、授業の時にさらに、「本当の気持ちを教えて欲しい。フィリピンの学校で日本軍の侵略行為をどう教えているのか」と踏み込んでみた。ジセールは少し表情をこわばらせたものの、「フィリピンは長い歴史を持っており、その間にスペインやアメリカ、日本に侵略された。日本だけが悪いわけではない。それに彼らは侵略しただけではなく、フィリピンにいろいろなものをもたらし、フィリピンの文化や経済を豊かにしてくれた」と友好的なスタンスを崩さなかった。
たしかにマクタン島のセブ空港の建物も、マクタン島とセブ島を繋ぐ大橋も、日本のODAで創られたものだ。セブには多くの日本企業が進出し、現地の雇用にも一役買っている。ジセールはこのことを指摘したあと、今はニューヨークにいるという彼女の恋人も「日本が一番好きだ」と言っていると付け加えた。コンピューターのプログラミング技術者としてアメリカの企業に就職した彼の夢は、日本で就職し生活することなのだという。ニューヨークでの日本食ばかり食べていて、一番の好物は寿司らしい。
ジセールによれば様々な国がフィリピンを支配するなかで、人種の混血が進み、もはや純粋なフィリピン人は小数派なのだという。スペイン人、アメリカ人、中国人、日本人、ひいてはインドやパキスタン人など、さまざまな民族の遺伝子が流れ込み、バラエティにとんでいる。ジセール自身も肌は色白で、容貌もフィリピン人というより、日本人に近いものがある。
去年と今年、あわせて5週間セブに滞在し、私は旧日本軍のアジア侵略についての質問を何人かのフィリピン人や韓国人にぶつけてみたが、誰もが「それは過去のことであり、今は違う。私たちは日本が好きだ」という。そして多くの人たちが日本に対する憧れを口にした。これは私にとって、少し意外な体験だった。
セブ島は日本軍とアメリカ軍の熾烈な戦いが行われた。その戦跡を訪ねてみたいと思い、ジセールに旧日本軍の施設があった跡地ののことも訪ねてみたが、「それは、もう、わからない」ということであった。戦争の被害者であったフィリピン人が、戦争の惨禍をそう簡単に忘れているとは思えない。この問題は来年セブを訪れたとき、引き続いて追求してみようと思っている。
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