橋本裕の日記
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私には二人の娘がいる。二人ともいずれ結婚して家を出るだろう。昔風に言えば、他家に嫁ぐわけだ。姓が変わり、心理的にもなんだか少し遠い存在になる。父親としては喜んでよいのか、哀しむべきか、複雑な心境だ。
近所に二人の娘を嫁がせた家がある。ところが、そのうちの一人が子供を抱えて戻ってきた。やがてもう一人も、子供を抱えて戻ってきた。一旦火の消えたような家が、いまは孫達で賑わっている。娘を嫁がせて淋しそうだった父親も、退職してのんびりしようとした矢先、娘に「お父さん、孫の面倒を見て下さい」と頼りにされて、いまは忙しそうである。
この大家族で年寄りの両親はさぞかし大変だろうなと思ったが、最近はそうでもない。一家の表情が明るい。そこに「出戻り」という暗いイメージはない。大家族を楽しんでいるという感じで、しわわせな笑顔が家の門にあふれている。
他家に嫁いだ二人の娘が、子供を連れて帰ってくる。「お父さん、よろしくお願いします」と言われたら、昔の父親なら「そういうわけにはいかない。世間体だってある」と追い返したかもしれない。しかし、現代は違う。「そうか、よく帰ってきてくれた」と、歓迎する親もいるかもしれない。時代が変わった。
総務省の人口統計によると、日本で過去10年間に結婚したカップルの50パーセント以上が離婚しているという。いまや日本はアメリカを抜いて、「世界一の離婚大国」だという。離婚が日常化し、一旦嫁いだ娘が、子供を連れて親元に帰るケースもあたりまえになってきた。これが現代のトレンドになりつつある。
考えてみれば、これは親にとっても娘にとっても悪い話ではない。娘は親元で気楽に子育てができる。あるいは子育ては両親にまかせて、仕事に専念できる。両親も娘と暮らしながら、可愛い孫の面倒を見るのは愉快であろう。
それでは、離婚した男性はどうかというと、これもそれほど不幸ではなさそうだ。時々自分の子供に会いに来て、かっての妻の実家に上がり込んだりする。実家の方でも「やあ、よくきたね」と歓待する。そのうち男の足が遠のいたと思ったら、また新たな若い女と恋愛中だという。結婚して子供を作り、また離婚するつもりかもしれない。
2005年の15歳未満の子供人口は約1760万人。この10年間で240万人も減っている。これは非婚化、晩婚化が大きな原因だ。子連れで出戻りというケースが増えれば、いまや1.25まで落ちたという日本の出生率も少しは改善するかもしれない。
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