橋本裕の日記
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キヨサキさんのお父さんは大学教授だった。息子のキヨサキさんに、安定した会社でいい仕事を見つけるようにと、いつも言っていたという。しかし、キヨサキさんはこうした自分の父の人生に共感が持てなかった。高い教育を受けた父は、いつも税金や保険料や請求書の支払いに追われ、お金に苦労していたからだ。
キヨサキさんは給料と年金に頼っている自分の父のことを「貧乏父さん」と呼ぶ。これに対して、会社を経営している友人の父親のことを「金持ち父さん」と呼んだ。金持ち父さんには学歴はない。しかし、大勢の人を使い、たくさんお金を稼いでいる。そして見るからに人生が楽しそうで活気がある。
キヨサキさんはこの金持ち父さんを見習った。彼のお金についてのアドバイスは貴重だった。それは学校でも、実の父親からも教えられなかった。しかし、キヨサキさんはそのアドバイスを受け入れることによって、自分自身、お金持ちになった。
キヨサキさんは学校を出た後、ゼロックスに就職した。ここまでは貧乏父さんの路線に従った。しかし、彼は「だれのために働いているんだ? だれを金持ちにしているんだ」という金持ち父さんの声をいつも心の中で聞いた。
彼は会社で働きながら、不動産業者の資格を取り、給料を貯めて不動産所有会社を設立した。やがて3年も経たないうちに、彼の会社からの収入は、ゼロックスから支給される給料よりも大きくなった。そこで彼はサラリーマンをやめて、社長業に専念することにしたわけだ。
彼の商売のやり方は、「借金をして安い物件を買い、それをなるべく早く、高く売る」というシンプルなものだ。それではどうやって、安い物件を手に入れたのか。彼それを破産・倒産を専門にあつかっている弁護士事務所や、裁判所で見つけたのだという。
<そういった場所では、7万5千ドルの家を2万ドル、時にはそれより安い価格で買うことができた。たとえば2万ドルで家を買ったとしよう。私は90日で2百ドルの利子を払う約束で友人から2千ドルを借りる。そしてそのお金を小切手にして、頭金として弁護士に渡す。
弁護士のもとで売買契約が処理されているあいだに、私は7万5千ドルの価値のある家を6万ドルで売り出す広告を新聞に出す。破格の値段に問い合わせの電話がひっきりなしにかかる。見込みのある買い手を選び出しておき、家が法的に私のものになったら、買い手に家を見せる。みんな掘り出し物には目がない。家はあっというまに売れる。
私は買い主に手続き等の費用として2千5百ドルを請求する。みんな大喜びでそれを払ってくれる。そのあとは、売買契約が完全に終了するまで代金を預かってくれたり、権利移転手続きをやってくれる専門会社にすべてを任せる。
私は2千ドルに2百ドルの利子をつけて友人に返す。これで友人も大喜び、買主も大喜び、弁護士も大喜び、私も大喜びというわけだ。私は2万ドルで買った家を6万ドルで売った。その結果、資産欄に、買主から受け取った4万ドルの手形が増えた。このお金を生み出すための私の実労働時間は全部で5時間だ>
こんなおいしい話があるだろいうか。実際、あるのである。しかし大方の人間は気がつかない。キヨサキさんは「ほとんどの人が、人生最大のチャンスを目の前にしながらそれを見過ごしてしまい、一年たってほかの人が金持ちになってからそのチャンスに気がつく」と書いている。そしてこうも書く。
<私たちはだれも持っている唯一の強力な「資産」は、私たちの頭だ。頭をうまく鍛えれば、あっという間に富をつくり出すことも可能だ。それも、3百年前の国王や女王たちが手に入れたいと願った富をつくり出すことも可能だ。情報時代のいま、お金は爆発的に増える。ほんの一握りの人間が、まったく何もないところから、アイデアと「同意」だけを武器に信じられないほどの大金持ちになっていく>
しかし、このマネーゲームはしばしば人間に道を誤らせる。キヨサキさんは「このゲームの中にこそいきいきとした活動があり、これこそが胸躍らせてくれるものだからだ」と書いているが、私にはこの言葉はすでにお金に魂を売り渡した者の口にする譫言のようにも響く。
たしかに、私たちは税金や保険料や請求書の支払いに追われ、お金に苦労する「貧乏父さん」にはなるべきではない。そして、こうした悲劇に見舞われないために、私たちは頭を有効な「資産」として使うことは必要だ。
しかし頭は何も「金儲け」のための資産だとは限らない。金儲けの他にも頭の使い道はある。人生には他にもいきいきとした胸躍る体験がたくさんある。
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