橋本裕の日記
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| 2006年07月12日(水) |
お金持ちは税を納めない |
お金持ちがどうやって課税されるのを逃れるか、それは西武鉄道の前会長の堤義明の場合を見てみればよい。結論から言えば、「会社」をかくれみのにするのである。ロバート・キヨサキさんも「金持ち父さん、貧乏父さん」のなかでこう書いている。
<金持ちと中流以下の人間を分け、金持ちをはるかに有利な地位に立たせているのは、会社という法的な組織がもつ力についての知識だ>
<会社は金持ちを守るためのものなのだ。ここで注意したいのは、会社は実際に形のある「物」ではない。会社というのは、実質的には弁護士事務所のファイルキャビネットに入っている、何枚かの法的書類をとじ込んだ一通のファイルにすぎない>
<課税の対象が広げられたときも金持ちの財産は守られた。このときも前の時代と同様、会社が隠れ蓑となった。おかげで会社を利用する方法はさらに普及した。というのも、所得税法が成立し、その蓋を開けてみると、会社の所得税率が個人のよりも低かったのだ。さらに、前にも説明したように、会社の場合、支出の一部は経費として、税を払う前の収入から差し引くことができた>
<問題は、いつも戦いに負けるのが知識を持たない人達であることだ。つまり、毎朝早くからせっせと仕事をし、きちんと税金を払っている人たちがいつも負ける。こういう人たちも、金持ちがどんなふうにゲームをしているか、そのやり方を知っていさえすれば勝つチャンスがある>
<今の平均的なアメリカ人は、一年のうち5ケ月から6ケ月は税金のため、つまり政府のために働く。私に言わせれば、これはずいぶんと長い期間だ。それにいまの所得税のシステムでは、一生懸命働けば働くほど政府に払うお金も多くなる>
<貧乏父さんはそんな政府の仕打ちに一度も反抗したことがない。金持ち父さんもそんなことをしたことはない。金持ち父さんはただもっと頭を使ってゲームをしたのだ。彼が使った手段は「会社」だ。これこそ金持ちになる最大の秘訣だ>
キヨサキさんの主張を一口でまとめれば、お金持ちになりたければ、そして税金を納めたくなければ「会社」を作りなさいということだ。そうすれば他人を金持ちにするためにではなく、政府のためにでもなく、「自分を金持ちにする」ために働くことができる。
いや本当の金持ちはお金のために働いたりはしない。「お金を働かす」のが本当の金持ちだという。キヨサキさんはそのことを「お金持ち父さん」から学んだ。そしてキヨサキさんは金持ちになり、さらに彼の書いた本は世界中で売れ、彼はますますお金持ちになった。
最近、アメリカの中学校の教科書を読んでみたが、そこには「お金と株」や「会社のしくみ」について、ずいぶん詳しく書いてあった。「Be an Enterpreneur!」(起業家になろう!)という章では、パートナー・グループで実際に会社を立ち上げる模擬演習までしている。
<あなたとパートナーには、すでに3000ドルの開業資金があります。それに手をつける前に、はたして経費はどのくらいになるのかを計算する必要があります。一枚の紙に、月別経費の表を作成してください>
生徒は自分の会社の名前を考え、事業計画書を作りながら、3000ドルの他に銀行で融資を受けるかどうかも決めなければならない。販売業者免許を取得するための経費や手続き、宣伝広告の方法や経費、労働者に支払う経費なども計算する。こうしたことをアメリカの中学生は学校で学んでいるわけだ。
世の中が変わるにつれ、ずいぶんと教育の内容もかわってきた。私はこうした教育は日本でも必要だと考える。実践的な方法で経済の仕組みを知り、税金のあり方について考えることは大切なことだからだ。しかし、教室がたんに「お金持ち」になるためのノウハウを教える場所になることには疑問を感じる。
世の中が「お金持ち父さん」ばかりになったら、だれが製品を作ったり、道路工事をしたり、病院で働いたりするのだろう。この本を読んでいて、私はこの素朴な疑問につきまとわれた。今のアメリカのシステムを前提にして、いかに「お金持ちになるか」を教える前に、庶民が幸せに暮らせるもっとましな社会にするために、私たちはどんな努力をすべきか。学校で教えるべきことは、先ずこのことではないのだろうか。
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