橋本裕の日記
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2006年07月10日(月) 最高税率を引き上げるべし

 アメリカにしろ日本にしろ、巨大な財政赤字を生む原因には税収不足である。それではなぜ税収不足かといえば、金持の個人や企業から大幅な減税をしたからだ。

 日本の最高税率(所得税と住民税の合計)は、85年当時は88パーセントだった。ところが現在は50パーセントにまで押さえられている。その一方で、所得格差が広がり、国や地方の公的負債が800兆円までふくらんでいる。

 ここにいたって、ようやく政府税調も最高税率の引き上げを検討しはじめた。政府税調はこれまで50パーセントの最高税率をアメリカの例などを引きながら「妥当」としてきた。しかし、国民の「格差是正」の声は無視できなくなって、ようやく重い腰を上げた。

 7月1日の朝日新聞の記事によれば、先月30日の総会では、「所得税による所得再配分機能が弱まっている。最高税率を引き上げて、所得再配分機能を強めるべきだ」と、引き上げを求める声が相次いだという。

 消費税のみの増税だと、低所得者ほど税負担が重くなる。そこで納税者の不公平感をなくすため、最高税率の引き上げを抱き合わせにする。これが税調や財務省の消費税値上げにむけた戦略のようだ。

 問題は、抱き合わせ値上げをしておいて、いずれ最高税率だけ下げることだ。じつはこうした抱き合わせ戦術がよく使われる。たとえば法人税を大幅に引き下げたときは、サラリーマン減税を抱き合わせにした、しかし、昨年3月に所得税改正案が衆・参両院で可決され、定額減税は今年から半減されたが、法人税が引き上げられたわけではない。

「サラリーマンだけをねらい打ちにした増税ではなく、税制の不平等こそ是正すべき。税制改革とは本来、国民の所得格差の行き過ぎに歯止めをかけるものでなくてはならない」

 これは連合の高木剛会長の発言(週刊現代6/10)だが、こうした主張がもっと大きくなってほしい。裕福層が所得転移をするとか、企業の国際競争力が落ちるという反論があるが、経済大国の日本とアメリカがこういう口実や視点から裕福層の減税競争をしている間は、世界は少しもよくならないだろう。


橋本裕 |MAILHomePage

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