橋本裕の日記
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妻が首の付け根に出来物ができて病院に行ったので、昨日の昼食は次女と一緒に食べた。ちなみにメニューは卵焼き、味噌汁、鱒、キュウリと大根の漬け物である。食事の準備は大学の寮から帰ってきた次女がしてくれた。
食事をしながら、七夕なのを思い出して、「今日は何の日か知っているか」と娘に聞いてみた。「さあ」と首を傾げているので、「七夕だよ。七夕とはどんな日か知っているかい。親に孝行を尽くす日だ」と私。「もう孝行したじやない」と娘。最近は用心深くなって、なかなか騙されない。
「ほんとうはね、天の神様にお願いをする日なんだよ。お母さんのおできを早く治してあげて下さい、とかね」 「お父さんが無事ゼブから帰りますようにとか?」 「そうそう」 「竹を買ってくるわ。お父さんも何か短冊に書いたら」 「そんな面倒くさいことしないよ。それに、お父さんまでお願い事をしたら、神さまが忙しくなるだろう。お父さんは、何もお願いしないんだ」 「神様がいそがしくなるの? そんなことないわよ」
娘とそんな会話をしたあと、私は学校に行った。学校は球技大会が終わり、昨日から保護者会が始まっていた。学校を欠席がちな少女がいる。その母親と1時間近く語り合った。いろいろとアドバイスをしたが、肝心の本人は昨日も学校をさぼつた。昼夜逆転して、毎日朝返りだという。「毎晩、どこで何をしているのか、とても心配で・・・」と母親は困った様子だ。
「学校をやめることも選択肢のひとつですね。仕事もしない、学校もさぼりがちでは、本人にとって何もいいことがありません。学校をやめて、仕事に集中するとかね。さいわいもうすぐ夏休みなので、何かアルバイトでもさせてください。いいリズムができれば、本人の精神状態もよくなりますよ」
母親が要求するように仕事と勉学と両立できればよいのだが、彼女は今はあそびたい盛りで、とても両立は不可能だ。彼女は何とか両方ともがんばろうとしたが、無理だった。そこで、ますます遊びの方に「逃避」している。本人もこれではいけないと思うが、母親や教師に言われる度にむかむかして、ますます遊び友達の方に心が向かう。
「この調子では、9月のうちに欠席オーバーで進級できなくなります。あまり学校にこだわらずに、本人の肩の荷を軽くしてあげることも必要です。とりあえず、仕事につかせて、様子をみてはどうでしょうか。学校は本人が勉強しなければという気になったときに、もう一度受け直せばいいです。うちの学校はいつでも歓迎しますよ」
実際、退学したあと、仕事を通して立ち直り、再び学校に入り直して、今度は優秀な成績で卒業していった女生徒もいた。そんな実例なども紹介しながら、母親のこわばった心をもみほぐそうと努力した。そのかいがあって、母親は少し明るい表情で学校をあとにした。
帰宅すると、すでに次女は大学の寮に帰っていたが、居間に短冊や飾りをつけた七夕の笹が飾ってあった。テーブルの上に、硯と短冊が置いてあり、妻が「あなたも書いたら」と勧めてくれたが、「僕はいいよ」と断った。「じゃあ、これで」と、あらかじめ次女が私のために書いて置いた短冊を、妻がそこにつけた。こうしてわが家の七夕の一日が終わった。
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