橋本裕の日記
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昨日の日記について、長野県で小学校の先生をしてみえるMさんから、メールをいただいた。M先生は私と同年輩のベテラン教師だが、やはりクローズアップ現代の番組を見て、「定年まで勤められるか?など心配になるような事が出てきて、やはり他人事ではなくなってきました」と感想を書いてみえる。学校で悪戦苦闘されている様子がうかがえたので、さっそくこんなメールをお返した。
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M様、
貴重な休日です。M先生はまた山にでもお出かけでしょうか。こちらはいいお天気ですが、暑いのでステテコ姿です。出かける気力もわかず、少し景気づけに、ドヴォルザークの「新世界」をCDで聞いたりしています。この曲、高校時代から大好きなのです。これを聴くと、心が爽やかな霊気に満たされて、活力が生まれます。
先生のメールを読んで、職場の大変な様子、伝わってきました。NHKの番組でも、「戦場」のような学校の現状がレポートされていましたが、戦略や戦術という言葉が飛び交うほど、現在の学校の現場は教師にとって厳しいものがあります。
番組の中でプロ教師の会の河上亮一さんが、すべてに全力投球すると玉砕してしまう。「優先順位」を持つことが大切だと「生き残るための戦略・戦術」をアドバイスしていましたが、私もこのことはとても大切ではないかと思っています。
要するに「力を抜く」ということです。そして完全主義を捨てる。90点、100点ではなく、80点をめざし、60点でもよしとする。そして他人にも、生徒にもパーフェクトを求めない。そんなふうに、のんびりと心にゆとりを持てたらいいなと思っています。
私の父は満州で一兵卒として戦いましたが、「死んだふり」をしたことがあると言っていました。その戦いで寝そべっている父を乗り越えて、勇敢に前進していった戦友はみんな死んだといいます。玉砕するのが馬鹿らしくて死んだふりをした父は卑怯者ですが、そのおかげで余計な殺生をしないですみ、自分も命がたすかりました。
父が死んだふりをして寝そべっていたおかげで、私が今、ここに生きているのだと思うと、なんだか不思議な気がします。そして、私はときどき父のこの話を思い出して、「死んだふり」をします。つまり「仮病」を使うのです。嘘も方便です。教師を長くやるためには、いろいろなテクニックが必要ですね。
お互いに何とか無事定年を迎えることができたらいいですね。あとしばらくです。優先順位を考えて、ぼちぼち、がんばりましょう。まずは自分のために、家族のために、そして、可愛い生徒達のために。校長や学校や県教委や国のために頑張るのはあとまわしです。
2006,6,24 橋本裕
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昔は「仮病」を使って学校を休み、遊びに行ったりしていたものだが、そのうち、血圧が180を越えて、本物の病気になってしまった。「死んだふり」ができればよいが、小心者の私にはなかなかむつかしい。日本は毎年3万人以上が自殺している自殺大国だ。教師の自殺も結構多いのではなかろうか。
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