橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2006年06月24日(土) 教師の定年前退職

 定年前に職場を去っていく教師が増えている。先週水曜日のクローズアップ現代でも、この問題をあつかっていた。それによると、公立の小中学校では約6割もの教師が定年前に退職しているということである。

 広島県の場合は、この5年前はこの割合が4割だった。それが05年には7割にもなったという。とくに多いのは40代、50代のベテラン教師だという。好んでやめていくのではなく、教育現場に失望してやめていく人がほとんどだ。

 精神的に追いつめられ、体調を崩し、自信を喪失してやめていく教師も多い。番組に登場した元教師たちも、口々に「無念だ」「口惜しい」と言っていた。子供が好きで、子供からも慕われて、教育に生きがいを感じていたベテランの教師が、こうして淋しく教壇を去っていく。

 なまじ真面目で、教育熱心な教師ほど、その挫折感は大きいのかも知れない。番組でも「本当に現場にいて欲しい先生や校長がやめていく」という広島県の教師の声が紹介されていた。

 公立高校に勤務する私の周りでも、かなりの人が定年前に退職している。たとえば、7年間勤務した前任校の場合を思い出してみると、ざっと12,3名退職した中で、定年まで勤めた人は5,6名ではなかっただろうか。

 悲しいことに、在職中に2人がなくなっている。二人とも50歳代前半の働き盛りだった。国語科のA先生は声が出なくなって休みが増え、そのあげく退職した。数学科のB先生も私と同年代だったが、「もうやっていられません」という言葉を残して、学校を去っていった。

 教師の置かれている環境が年々厳しくなっている。規律を失い我が儘な子供たち、それに輪を掛けたような自己中心的な親たち、そして毎年増え続ける雑務や研修。こうしたなかで意に染まない「愛国心教育」もしなければならない。評価制度の導入で、職場の雰囲気がなにか刺々しいものに変わりつつある。こうしてストレスがいやでもたかまる。

 教育委員会はこれを「教師が時代の変化に対応できないためだ」と見ている。そこで、教師の力量を高めるために「研修」を充実させるのだという。ところが、これがまた、教師のゆとりを奪い、ストレスの種になる。研修よりも、必要なのはゆとりである。少人数学級への移行や、福利厚生の充実であろう。

 ところが新聞報道によると、政府与党は教員の給与を一般職並に引き下げようとしているそうだ。これではますます、優秀な人材は教育界に集まらないだろう。私の娘は大学の教育学部の4年生だが、教員試験は受けないという。私もあえて、娘の選択に異を唱えなかった。教員になって苦労することはないと思っている。

 私自身、学級崩壊を経験するなど、つらい思いをした。教師を辞めたいと思ったことは一度や二度ではない。それでも続けられたのは、よき同僚に恵まれたからだと思う。辛いとき、私を温かく支えてくれる同僚の無言のはげましほど嬉しいものはない。


橋本裕 |MAILHomePage

My追加