橋本裕の日記
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2006年06月19日(月) |
村上ファンドを支えた人々 |
日銀の福井俊彦総裁が村上ファンドに1千万円投資し、数百万円のキャピタルゲインを得ていたらしい。小泉首相も日銀当局も、これは何等問題がないと言う。しかし、これは私たち庶民の感覚とはずいぶんかけはなれている。
共同通信社の世論調査によると、日銀の福井俊彦総裁が総裁就任後も投資を続けていたことについて、「問題ない」は10.7%にとどまり、62.4%が「問題だと思う」と答えている。そして49.2%が「辞任した方がよい」と回答している。
村上ファンドの村上世彰代表(46)は、阪神電気鉄道やTBSなど上場企業の株式を大量取得し、「モノ言う株主」として経営改革を迫った。ライブドアの堀江とともに新時代を担うホープ、改革の旗手として期待されていた。
しかし、村上ファンドはいつか出所の明らかでない出資者から資金をあつめ、時間外取引などの手段をつかい、株ころがしと言われる強引な投機的売買で巨額の利益をあげるようになった。そして、ついに6月5日、村上代表はニッポン放送株の取引についてインサイダー取引の疑いで東京地検に逮捕された。
日銀が定めた「日本銀行員の心得」には「世間から些かなりとも疑念を抱かれることが予想される場合には、個人的利殖行為は慎まなければならない」とある。日銀のトップに君臨し、日本経済の舵取りの責任者である総裁が、こうした年率20パーセントという投機的なファンドで資産を運用していていいいのだろうか。
アメリカのグリンスパンFRB前議長は、金融政策によって価格が大きく変動する金融商品(株式や長期国債)は持たず、短期国債や銀行預金で資産を運用していたという。金融政策の責任者が株を持つことがすでにインサイダーであり、まして投機的ファンドに手を出すなど、ふつうの常識では考えられない。こうしたことが再発しないようにするには、日本もアメリカのように日銀総裁の資産を毎年公開すべきだろう。
福井総裁はもとより村上ファンドの生みの親の一人と言われている。村上ファンドに投資した理由を、「勇気ある青年を激励するために、仲間とともに金を出した」と述べている。仲間というのは、99年に席を置いていた富士通総研の人たちらしい。彼は2002年にも「彼のやろうとしていることは正しい。私は全面的に応援している」(日経ビジネス2002年2月28日号)と発言している。
村上ファンドには他にも有力な守護神がいた。オリックス会長で、規制改革・民間開放推進会議議長の宮内義彦である。村上は97年に通産省官僚として、企業買収M&Aの法律の整備を担当しているが、その頃から宮内会長とは「師弟関係」を結んでいた。
官僚を辞めて、村上ファンドを立ち上げるときも、宮内会長から資金を出してもらっている。村上ファンドはオリックスの別働隊だといわれるゆえんだ。
村上は官僚として法律を作った立場の人間だ。それは自分のかかわった法律を利用して、金儲けに走った。プロを自任し、法律はこのように利用するものだよとお手本を示したつもりだったのかもしれないが、考えてみればこれも究極のインサイダーだといえなくもない。
村上といい、堀江といい、時代の寵児としてマスコミにもてはやされた。しかし、検察が動くと、掌を返したように、その巨悪を報じ始める。多くの情報を持ちながら、これを国民の前にあきらかにせず、検察が動かないと報じないというのはどうしたことか。
彼らを「改革者」として祭り上げ、ライブドアや村上ファンドを支えた張本人は、テレビや新聞などの大マスコミであることを忘れるわけにはいかない。
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